不動産会社が受領できる仲介手数料は、宅地建物取引業法や国土交通省告示によって上限額が定められています。そして、事実上その上限額が相場になっています。

しかし、それはあくまで「上限額」であって、規定された金額以下なら不動産会社がいくらに設定しようが構いません。違う見方をすれば、買主が値引き交渉をする余地があるということです。

とは言え、値引き交渉だけではうまくいきません。仲介手数料を下げてもらうには、交渉以前に「不動産会社選び」が大切なのです。

本稿では「投資用の中古共同住宅を買うときの仲介手数料を下げる方法」について解説します。これからアパートやマンションを買って大家をやりたいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

仲介手数料を無料にする方法については、Youtubeでも弊社代表の沢辺が解説しております。

投資用に一棟まるっと購入するときにかかる費用一覧

さっそく、投資用の中古物件を買う際の費用について解説します。ここでは、物件代金を除く「諸費用」をイニシャルコストとランニングコストに分けてご紹介したいと思います。

イニシャルコスト

投資用の中古物件を購入する際の諸費用は、居住用の中古物件を購入する際とほぼ同じです。「購入する物件価格の5%~10%が目安とお考えください。

諸費用の内訳は、主に手数料・保険料・税金・清算金などで構成され、売買取引ごとに変わります。

  • 手数料:仲介手数料、銀行の事務手数料、司法書士報酬など
  • 保険料:火災保険、地震保険、団体信用生命保険など
  • 税金:印紙税、登録免許税、不動産取得税など
  • 清算金:固定資産税、都市計画税、管理費、修繕積立金など

物件購入時にかかる諸費用項目については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

ランニングコスト

投資用の物件は、毎年固定で諸経費がかかります。この諸経費はキャッシュフローを考えるうえで欠かせない要素ですので、しっかり把握しておきましょう。

主な諸経費は、以下のとおりです。目安額は物件の状況により変わりますが、家賃の15~30%程度と考えていただくとよいでしょう。

  • 管理委託手数料:PM(不動産経営管理)費、BM(建物管理)費など
  • 修繕費・点検費:原状回復費用、外装・内装・設備の点検交換費用など
  • 保険料:火災保険料、地震保険料など
  • 入居者募集費用:広告宣伝費、事務手数料など
  • 税金:固定資産税・都市計画税、所得税、住民税、法人税、税理士費用など
  • ローン:返済+利息
  • その他:通信費、消耗品、雑費など

ローンの元金部分については経費計上できませんが、投資家の観点からすると「ランニングコスト」と捉えて収支を考えるほうがよいでしょう。

なお、区分所有では「管理費、修繕積立金」などが必要です。一棟所有では「共用部などの水道光熱費・清掃費用、エレベーターの法定点検費用」などが必要です。

投資用の物件購入時にかかる仲介手数料はいくら?

不動産取得時の諸費用の中でもとくに高額なのが「仲介手数料」です。仲介手数料は宅地建物取引業法(第46条)や国土交通省告示(第493号)によって上限額が定められていて、投資用と居住用の違いはありません。

参考:宅地建物取引業法 第46条
参考:国土交通省告示 第493号

仲介手数料の上限額は、以下の計算式で求められます。

物件代金の額 仲介手数料上限額の計算式
200万円未満の物件 売買代金の額の5%+消費税
200万円以上400万円未満の物件 売買代金の額の4%+2万円+消費税
400万円以上の物件 売買代金の額の3%+6万円+消費税



多くの不動産会社は、この計算式で求められる上限額ギリギリで仲介手数料を請求しています。ですので、事実上この上限額が相場になっています。

では、実際どの程度の金額になるのか試算してみましょう。

物件代金の額 仲介手数料(上限額)
1000万円 39.6万円
2000万円 72.6万円
3000万円 105.6万円
4000万円 138.6万円
5000万円 171.6万円
6000万円 204.6万円
7000万円 237.6万円
8000万円 270.6万円
9000万円 303.6万円
1億円 336.6万円



ご覧のとおり仲介手数料はとても高額で、成約金額に相関して上がっていきます。ただし、この額は法令で定められた上限であり、安くしても問題ありません。

なお、宅地建物取引業者が「売主」となって販売している物件は、仲介業者を挟まず直接購入できる場合があります。このケースでは、仲介手数料はかかりません。

仲介手数料の相場や計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

投資用の物件にかかる仲介手数料を交渉する方法

近年、利便性が高いエリアを中心に不動産価格の値上がりが著しく、不動産投資の利回りは低下傾向にあります。ですから「初期費用をいかにして抑えるか」がとても重要になっています。

先述のとおり、初期費用の中でもとくに大きな割合を占めるのが「仲介手数料」です。これを節約できたら初期費用を大幅に削減できます。

とは言え、不動産会社がおこなう仲介業務は複雑で、労力や専門性を考慮すると「上限額」でも妥当な金額です。値引きを要求されるのは心外であり、やりたくないのが不動産会社の心情でしょう。

ですがら、基本的に「値引きしてくれない可能性のほうが高い」とお考えください。実際、以下の資料にある調査では、おおよそ8割の不動産会社が上限額で請求しています。

参考:中古住宅市場における両手仲介と手数料率,成約価格への影響(白川・大越, 2017)

値引きに対して消極的な不動産会社にしつこく頼んでも、応じてもらえることはありません。とくに、以下の不動産会社は値引き交渉に応じない可能性が高く、強引な交渉は避けていただくほうがよいでしょう。

  • 大手の不動産会社
  • 特典を設けている不動産会社

難度が高い値引き交渉ですが、まったく成功する可能性がないわけではありません。では、値引き交渉の成功率を上げるには、どこに注意すればいいのでしょうか。

値引きを交渉するときは、媒介契約の締結前に打診しましょう。その際、以下の3点に注意して交渉するとうまくいく可能性が高まります。

  • 購入意欲の高さを示す
  • 値引きしてくれる不動産会社の存在を伝える
  • 予算に限りがあることを伝える

ただし、値引きに応じてくれる場合であっても、以下のデメリットがあることも知っておいてください。

  • 担当者の意欲が低下する
  • 仲介のクオリティーが下がってしまう
  • 上客を優先して、後回しにされる

投資家にとって不動産会社との関係は、良好であるほうがよいでしょう。ですから、値引きは慎重におこなってください。相手が渋っている様子なら「値引き」より「関係」を大事にしたほうが無難です。

一方で、最初から仲介手数料を低価格に設定している不動産会社もあります。そのような不動産会社を探していただくのも、仲介手数料を下げるひとつの方法です。

上述の仲介手数料を下げる方法については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

【アパート投資編】投資用の物件の選び方

つづいて、投資用のアパートを選ぶ際にご注目いただきたいポイントをご紹介します。

投資用物件を購入されるとき、マンションなら区分(一室)購入が多く、アパートなら一棟購入されるケースが多いでしょう。では、アパートを一棟購入するなら、どこに注目して物件選びをすればいいのでしょうか。

アパートを一棟購入する際は、後から変えられないことにご注目ください。たとえば、以下の3点は後から変えられず、かつ空室率の低減に関わる項目です。

  • 立地
  • 外観
  • 採光

順番に解説していきましょう。

立地

立地を見る際に大事なポイントは「空室リスクが低いかどうか」です。継続して入居者を獲得できる見込みがある立地が「よい立地」です。

なお、駅から近いからと言って必ずしも「よい立地」とは言えません。たしかに駅から近い物件は需要がありますが、以下の短所もあり、収益性の観点からは見劣りする物件が少なくありません。

  • ライバル物件が多数ある
  • 購入費用が上がりがち
  • 差別化のために外観や内装のリフレッシュが欠かせない

顧客層のニーズに合う環境なら、駅から徒歩10分以上の築古物件であっても、安く買って相場より少し安く貸し出せば一定の需要があるものです。ですから、立地の一側面にこだわり過ぎるのはよくありません。

外観

「カーブアピール (curb appeal)」という賃貸不動産の用語をご存じでしょうか。これは「通りから最初に目に入るその物件の姿」を魅力的にアピールする施策を指す言葉です。

人間と同じく建物も第一印象が大切で、外観の印象が悪い建物は内覧や成約につながりにくくなります。逆に外装やエントランス、ポスト、ゴミ置き場などに管理の行き届いている様子が見られると、成約につながりやすくなります。

現在、賃貸物件を探している方はまず不動産ポータルサイトで物件を探し、そこに掲載されている写真を見ます。外観の良し悪しが内覧のお問い合わせ数に直結しますので、ご注意ください。

採光

賃貸アパートの居住者は、若者や単身者が多いでしょう。そのような方々は日中留守にしがちで「昼間の明るさより、低家賃の物件のほうがいい」という方が少なくありません。

ですから物件を安く購入して、相場より安く貸しても収益が出るのであれば、多少暗い物件であっても問題ありません。築年数も、賃貸物件では妥協してもらいやすい条件のひとつですので、過度に気にしなくて大丈夫です。

一方、ファミリー向けの物件は、日中明るいほうがいいでしょう。うす暗い物件は、家賃を下げてもなかなか入居者を確保できません。

【マンション投資編】投資用の物件の選び方

マンションの場合も、考え方はアパートと同じです。後から変えられないことにご注目ください。

ただし、マンションの場合は一室だけ購入するケースが多いでしょう。単身者用だけでなく、ファミリー用や女性をターゲットにした物件も少なくありません。その点を踏まえて、補足説明をしておきましょう。

外観

マンションを一室だけ購入する場合は、築年数より見た目を優先したほうがよいでしょう。つまりそれは、よく言われる「マンションは、管理を買え」を実践するということです。

マンションの管理の質は、エントランスや共有部分をよく見るとわかります。見るからに管理の不行き届きを感じる物件は、内覧の際に印象が悪いだけでなく、建物の寿命を縮めている可能性があります。

一人暮らしの女性をターゲットにしている物件は、安全性を重視しましょう。オートロックやホームセキュリティだけでなく、宅配ボックスや浴室換気乾燥機なども需要があります。

参考:週刊 全国賃貸住宅新聞「人気設備ランキング 2020」

広さ

ファミリー向けの賃貸マンションは、分譲マンションとの競合を避けねばなりません。昨今は低金利ですから、住宅ローンの返済額が低く抑えられます。よって、家賃が高いと「いっそのこと、買うか」となりやすいのです。

そうなると、40~50㎡台の物件が狙い目になります。じつは、この広さは分譲マンションでは供給が少ないのです。しかし、夫婦(DINKSや子が独立したシニア)から3~4人の世帯までターゲットにできますので、需要はあります。

首都圏の駅周辺では、供給量が多い60~80㎡台のマンションより、リセールバリュー(新築時価格の維持率)も高い水準を維持しています。

不動産投資の注意点

最後に、不動産投資の注意点を2つご紹介して終わりたいと思います。

物件の「利回り」や「収益性」を確認する

ご存じのとおり、利回りには「表面利回り」と「実質利回り」があります。そして、表面利回りと実質利回りには、大きな差があります。

ですから、諸経費をちゃんと計算して、実質利回りで収益性を確認しなくてはなりません。表面利回りが高い物件を購入しても、諸経費が高額だと実質利回りは低くなってしまいます。

  • 表面利回り:年間の家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
  • 実質利回り:(年間の家賃収入-年間の諸経費) ÷ (物件価格+諸費用) × 100

物件の築年数や耐用年数(構造により変わる)も、確認しておきたいところです。金融機関は、築年数や耐用年数によってローンの最長借入年数を調整しています。

残耐用年数が短い物件は、短い期間しか借入ができず、月々の返済額が高くなりがちです。その分収益を圧迫しますので、自己資金を増やす等の工夫が必要になります。

管理会社の質を確認する

収益性と同じくらい大切なのが、管理会社選びです。空室率を下げるには、管理会社の助力が欠かせません。

優秀な管理会社とお付きあいできれば、しっかり収益を上げられます。管理会社に足を運び、ビジネスパートナーを探すつもりで以下のポイントを確認してみましょう。

  • 管理委託費は適切か
  • 集客力はあるか
  • 会社の雰囲気はよいか
  • 担当者は責任感があるか
  • 地域の事情や特性をよく把握しているか

管理委託費は「安ければよい」というものではありません。多少高額でも、良識のある居住者を早く見つけてくれる管理会社のほうが、結果的に収益が向上することも考えられます。

なお、集客力の指標として「入居率」を公開している管理会社が増えています。しかし、入居率は管理会社によって算出方法が異なりますので、数パーセントの違いにこだわらないほうがよいでしょう。

入居率のわずかな差より、その管理会社の得意な条件(エリアや築年数、顧客属性など)と自分の物件が重なるのか、チェックするほうが大切です。

【まとめ】不動産投資物件を購入する際、仲介手数料は無料にできる

仲介手数料額は法令や大臣告示で上限が定められていて、事実上、上限額が相場になっています。とは言え、あくまで「上限額」ですから、値下げ交渉をする余地はあります。

ただし、それほど期待できないうえ、担当者の意欲をそぐことにもつながりますので無理強いはやめておきましょう。ぜひ、最初から価格設定が低い不動産会社の利用をご検討ください。

弊社のサービス「イエフリ」でも、仲介手数料を無料(条件によっては半額)にできるようサポートしております。お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

ホリカワダット

インテリアコーディネーターと1級カラーコディネーター資格保有。主に住宅分野を専門とするライター・ブロガー。工務店営業支援もおこなう複業フリーランス。高気密高断熱の注文住宅を得意とする建築会社で約8年間、営業職を経験。年間200組のお客様をサポートした経験と、自宅の分譲マンションをスケルトンからリノベーションした経験をもとに、家探しや家づくりの資金計画などをわかりやすく解説します。

この記事を監修した人

株式会社ユナイテッドリバーズ代表取締役沢辺敦志(さわべあつし)

千葉県出身。自身の自宅購入時に、不動産仲介会社に不満を持ったことをきっかけに不動産売買仲介業を開業し、不動産仲介手数料無料機構イエフリをオープンさせる。
自身の苦い経験から、受付・接客業務に特にこだわってチームづくりを心がけてサービス運営している。
趣味は料理、二児の父。

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