これまで「仲介手数料無料 (ゼロ円)」をビジネス手法にしている不動産会社は、ほとんどありませんでした。しかし、近年は徐々に増えていて、売主や買主にとって嬉しい状況です。

とは言え、仲介手数料無料の不動産会社が必ずしも「良心的な会社」というわけではありません。値引き分を「サービスの改悪」や「違法行為」で穴埋めしている会社が、わずかながらあるようです。

本稿では、仲介手数料無料化のデメリットを紹介しながら、そもそも本当にお得なのかを解説します。ご自宅の売却をご検討中の方や中古物件の購入をご計画中の方は、本稿を参考に、仲介手数料を上手に節約してみませんか?

仲介手数料無料にできる物件や、仲介手数料無料の仲介会社の選び方について、YouTubeで代表の沢辺がより詳しく解説しております。

仲介手数料無料のデメリットとは?

仲介を事業とする不動産会社の主な収入源は、売主や買主からいただく「仲介手数料」です。受領した手数料は営業活動のもとで(原資)にもなりますので、そう簡単に値引きできません。

もし、値引きが経営努力によるものなら問題ないでしょう。しかし、サービスの質を落としたり、宅建業法で認められていない請求で埋め合わせしたりされると、利用者にとって不利益が発生します。

これから、売主と買主、それぞれご注意いただきたい「仲介手数料無料のデメリット」をご紹介します。ご紹介する事例はできるだけ避けたい「仲介手数料無料」ビジネスですので、お気をつけください。

売主は、市場価格で売れなくなる

悪質な仲介手数料ゼロ円業者につかまると、不利な情報を隠され、売主は物件を市場価格で売れなくなる可能性があります。これは、仲介手数料無料化の仕組を知っていると防ぎやすくなります。

不動産会社が買主の物件探しを担当する際、物件の売主が事業者であった場合は、仲介手数料を売主からもらえます。ですから、買主の仲介手数料を無料にしても、不動産会社がこの取引から得られる報酬はゼロになりません

一方、物件の売主が個人であった場合は、ほとんどのケースで片手仲介(売主側にも不動産会社がついている状態)になります。買主側の不動産会社は売主から仲介手数料がもらえず、買主の仲介手数料を無料にできません

さて、不動産会社が売主の物件売却を担当する際は、どうなるでしょうか。

買主が事業者(買取業者)の場合、買取価格は市場で売却する価格より低くなります。買主が個人の場合、大抵は片手仲介(買主側にも不動産会社がついている)になりますので、売主の仲介手数料を無料にできません

売主側の不動産会社がうまく買主をみつけ、両手仲介になった場合はどうでしょうか。一方的に買主から手数料をもらい売主を無料にするのであれば、不動産会社は買主寄りになるでしょう。積極的に値下げを勧めてくるかもしれません。

なお、片手仲介と両手仲介の詳しい解説は、以下の記事でご覧いただけます。

このように、売主の仲介手数料を無料にするのは、現実的にハードルが高いと言わざるを得ません。せいぜい値引き交渉程度にしておき、早く高く売ることに注力したほうがよいでしょう。

買主は、価格や条件の交渉をしてもらえない

先述のとおり、買主の仲介手数料が無料になるということは「不動産会社は報酬を売主からもらっている」ということになります。つまりそれは、不動産会社は買主より売主の立場で仲介するかもしれない、ということです。

買主と売主の利益は相反します。物件代金を値引きするということは、売主の売却益が減るということです。不動産会社が売主寄りになると、積極的に値引き交渉してくれない、あるいは契約をせかしてくるといったことが起こり得ます。

ですから「仲介手数料無料」の不動産会社を選ぶときは、ポリシーを持って顧客満足を追求している会社を探さねばなりません。

仲介手数料無料で購入できる物件はお得でメリットも多い!

先にデメリットをご紹介しましたが、仲介手数料ゼロ円サービスにはメリットもあります。代表的なものを、2つご紹介しましょう。

諸費用を抑えられる

仲介手数料無料の最たるメリットは、諸費用が抑えられることでしょう。仲介手数料は不動産売買でかかる諸費用の大部分を占めますので、無料にできると諸費用が激減します。

ちなみに、仲介手数料は上限額が法令と告示で定められていて、事実上この上限額が相場になっています。これを参考に、仲介手数料がゼロ円になると、どの程度諸費用が減るのか試算してみましょう。

  • 1,000万円の物件を売買した場合:396,000円
  • 2,000万円の物件を売買した場合:726,000円
  • 3,000万円の物件を売買した場合:1,056,000円
  • 4,000万円の物件を売買した場合:1,386,000円
  • 5,000万円の物件を売買した場合:1,716,000円

ご覧のとおり、かなりの金額を節約できます。この節約分だけ「新生活を始める資金」が増えると考えると、ぜひとも無料にしたいところですよね。

なお、不動産売却時に必要な費用については、こちらの記事で解説しています。ご興味がある方は、あわせてご覧ください。

買主は住宅ローン審査が有利に進む

仲介手数料を減額できた分だけ借入額を減らせたら、住宅ローン審査の際に少し有利になります。借入が減れば支払う利息や月々の返済額も減らせるので、買主にとっては大きなメリットと言えるのではないでしょうか。

さらに、住宅ローンに連動して、ローン保証料や借入時に必要な抵当権設定登記費用も安くなります。仲介手数料の無料化には、その減額分を上回る不動産売買時のコスト低減効果があるのです。

仲介手数料無料で購入できる物件の見分け方

仲介手数料ゼロ円サービスを実施しているほとんど全ての不動産会社は
下記のような区別をしています。

  • 物件の売主が不動産事業者で、売主から手数料をもらえる物件 ⇒ 買主の仲介手数料を無料にできる
  • 物件の売主が個人の物件かつ売主は自社ではない不動産会社に売却を依頼している場合(売主からは手数料がもらえない物件) ⇒ 買主の仲介手数料は値引きで対応

不動産検索サイトからは、判別できないことも多いのですが
リフォームしたばかりの中古マンション/中古一戸建てや、新築一戸建ては
売主から手数料がもらえる物件=仲介手数料を無料にできる物件
であるケースが多いです。

上記は、あくまで目安なので
詳しくは、お問い合わせください。
下記でも、1分で無料診断できます。

仲介手数料無料の不動産会社が増えてきて、どこを選べばいいのかわからないという悩みも

仲介手数料を無料にする不動産会社の増加にともない、不動産会社選びが難しくなっています。わずかながらサービスの質がよくない不動産会社も混ざっていて、そんな会社はどうにかして避けたいところですよね。

とは言え「安くても、ちゃんと仲介してくれますか?」と聞いても、正直に「値段なりですよ」と答える不動産会社はいないでしょう。ネットのクチコミも、どこまで信用できるかわかりません。

では、何を基準に不動産会社選びをすればいいのでしょうか。3つほど、選び方のポイントをご紹介したいと思います。

無料にできる理由を確認する

仲介手数料無料の不動産会社を選ぶとき、営業マンに「なぜ、無料にできるのですか?」「無料にできないケースもあるのですか?」と聞いてみましょう。そして、納得できる根拠があるか確認しましょう。

DX(デジタルトランスフォーメーション)等の活用で、うまく経費を減らして、仲介手数料を無料化している不動産会社があります。そのような経営努力を行っている会社なら、信用度に加点していいでしょう。

たとえば、ホームページから集客できている会社や、MA(マーケティングオートメーション)を導入している会社は、以下の特長によって経費の低減を図れます。

  • 駅前の一等地に店舗を構える必要がない
  • 大量のチラシや大掛かりな宣伝をしなくて済む
  • たくさんの営業マンやスタッフを抱える必要がない

そのように考えていくと、大手不動産会社が仲介手数料を無料にできない理由もわかります。一等地に店舗を構え、たくさんの営業マンやスタッフを雇い、さまざまなサービスを提供していますから、営業費がかかるのです。

他にどんな費用がかかるのか、確認する

「仲介手数料無料」と聞くと「他の費目で別途請求されるのでは?」と不安になる方がおられます。そんな方は、ぜひ率直に「他にどんな費用がかかるの?」と確認してみましょう。

原則的に、不動産会社は仲介手数料以外の費用を請求できません。ただし、以下の全てを満たすものは、請求できます。

  • 通常の仲介業務では発生しない費用
  • 依頼者の依頼にもとづいて発生した費用
  • 実費(実際に要する、手数料を含まない費用)

「通常の仲介業務では発生しない費用」とは、たとえば「特別に依頼した広告の料金」や「遠隔地への出張旅費」などが該当します。司法書士に支払う登記関連費用や金融機関に支払う住宅ローン関連費用も、仲介手数料に含まれません。

このような費用以外、つまり通常の仲介業務で発生する費用にもかかわらず請求してくる不動産会社は、選ばないほうが無難です。

複数社を比較して決める

さて、上述のように「無料化できる理由」や「他に請求される費用」を聞いたとしても、その回答から一般の方が不動産会社の良し悪しを判断するのは難しいかもしれません。では、どうすればいいでしょうか。

そんなときは、複数の不動産会社を比較してください。売主なら複数社に査定を依頼してみる、買主なら複数社に物件探しの相談をしてみるとよいでしょう。

各社の仲介手数料額やサービス内容、言動を比較することで、信頼できるかどうか見えてきます。「ある不動産屋がこんなこと言ってるけど、おたくはどう思う?」と、意見を求めることもできます。

それでも、不動産会社と媒介契約したあとその会社が不マジメであることに気づく場合もあるでしょう。そんなときは、媒介契約を更新せず、契約が切れたあと他の不動産会社に相談に行くのも1つの方法です。

おわりに:不動産の「仲介手数料無料」って本当にお得?

不動産売買の際、仲介手数料は無料になると諸費用を大幅に減らせます。住宅ローンの借入額を減らしたり、新生活を始めるための費用の足しにしたりできるので、ぜひとも無料にしたいところです。

しかし、仲介手数料ゼロ円サービスには、デメリットもあります。とくに、悪質な不動産会社につかまると利用者にとって不利益が発生しますので、不動産会社選びは慎重に行っていただきたいと思います。

イエフリ」でも、仲介手数料を無料(無料が難しい場合は半額)にできるようサポートしております。お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

ホリカワダット

インテリアコーディネーターと1級カラーコディネーター資格保有。主に住宅分野を専門とするライター・ブロガー。工務店営業支援もおこなう複業フリーランス。高気密高断熱の注文住宅を得意とする建築会社で約8年間、営業職を経験。年間200組のお客様をサポートした経験と、自宅の分譲マンションをスケルトンからリノベーションした経験をもとに、家探しや家づくりの資金計画などをわかりやすく解説します。

この記事を監修した人

株式会社ユナイテッドリバーズ代表取締役沢辺敦志(さわべあつし)

千葉県出身。自身の自宅購入時に、不動産仲介会社に不満を持ったことをきっかけに不動産売買仲介業を開業し、不動産仲介手数料無料機構イエフリをオープンさせる。
自身の苦い経験から、受付・接客業務に特にこだわってチームづくりを心がけてサービス運営している。
趣味は料理、二児の父。

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