仲介手数料は仲介業務を行う不動産会社にとっての唯一の利益ですが、最近では、その利益を無料や半額、割引などとする不動産会社を見かけるようになってきました。
しかし、割引や半濁はまだしも、唯一の利益を無料にしてしまっても、不動産会社の経営は成り立つものなでしょうか?
仲介手数料を無料にできる理由は、不動産の売買契約には売主という相手の存在があるということ。つまり、売主から仲介手数料を受け取ることができれば、利益は確保できるというのがそのカラクリです。ただし、買主からだけではなく、売主からも仲介手数料を受け取るためには一定の条件が必要となります。
仲介手数料が無料になるカラクリは、Youtubeで弊社代表の沢辺が詳しく解説中です。
具体的には、以下に挙げる4つの条件のいずれかを満たした場合、不動産売買の仲介手数料が無料や半額、割引となりやすいといえます。
- 売主がリノベーション業者や建売業者のような、不動産業者の場合
- 売主が個人で、仲介を受けた不動産会社自らが買主を見つけることができた場合
- 売主として自らが保有している物件を売却する場合
- 売主の代理となって物件を売却する場合
この記事では、仲介手数料を無料にできるカラクリや条件だけではなく、仲介手数料の上限額、仲介手数料を無料に見せかけた悪質な不動産会社の存在についても、詳しくご説明していきます。
目次
仲介手数料を無料にできるカラクリと確認すべきポイント
「慈善事業でもあるまいし、仲介手数料が無料なんておかしいと思わない?」
「たしかに。でも、きっと理由があるに違いないよ。たとえば買い手のいないワケあり物件だったりして!」
「こわーい!でも、仲介手数料無料の中には、新築戸建もあるみたいだけど?」
「ほんとだ…全部が無料や半額じゃないっていうところも、なにか理由があるのかもしれないな…」
仲介手数料を無料にできるカラクリは相手となる売主の存在ですが、取引をする不動産会社の取引様態についても確認しておく必要があるでしょう。
売主からも仲介手数料をもらえることがポイント
不動産を売りたい売主と、不動産を買いたい買主を結び付けるのが仲介業務を行う不動産会社の役割ですから、仲介手数料についても売主と買主のそれぞれから受け取ることができます。
つまり、買主の仲介手数料を無料としたとことで、売主から仲介手数料をもらうことができれば、買主の仲介手数料を無料もしたとしても、利益が確保できることになります。
ただし、売主から仲介手数料をもらえない場合には、買主から仲介手数料を回収しなければ、利益を確保することができません。売主から仲介手数料を受け取れない場合については、後ほど詳しくご説明いたします。
取引態様によっては、そもそも仲介手数料が発生しない
取引様態とは、取引をする相手の不動産会社が、どのような立場であるかを示すものです。売主と買主を結び付ける「仲介(媒介)」だけではなく、「売主」や「代理」の立場で広告を出している場合もあります。インターネット上の広告のみならず、チラシの中にも必ず記載しなければならない情報です。物件探しの際には、確認しておくとよいでしょう。
「売主」である場合
不動産会社として自ら保有している物件を売却する場合には、不動産会社は仲介業者としてではなく、自らが「売主」として直接取引をする立場になりますから、仲介業務としての報酬はそもそも発生しません。
ただし、不動産会社が「売主」の場合、仲介業務に含まれる様々な手続き(現地案内、条件交渉、契約書作成、重要事項説明、住宅ローンのあっせん)のうち、義務とされているもの以外はサポートを受けられない可能性があるため、注意が必要です。
「代理」である場合
売主の「代理」として取引をする場合は、代理行為を行っている不動産会社は売主と同等と見なされますが、法律上は買主から仲介手数料を受け取っても問題はないとされています。
ただし、「代理」の場合には、売主から受け取ることができる仲介手数料の上限が、仲介(媒介契約)の場合の2倍まで許容されているため、買主への仲介手数料負担を無料としている場合が多いといえます。
そして、不動産会社が「売主」の場合と異なり、仲介業務に含まれる様々な手続きのサポートを受けることができます(重要事項説明など、宅地建物取引業法の適用を受けて業務の一部が義務化されている)が、あくまでも「売主」の代理ですから、値引き交渉などに関して、必ずしも中立な立場であるとは言い切れないところが、デメリットといえるでしょう。
仲介手数料を無料や半額、割引できる条件
取引様態が「仲介(媒介)」の場合に、仲介業務を行う不動産会社が仲介手数料を無料や半額、割引できる条件を確認していきましょう。
売主がリノベーション業者や建売業者の場合
取引様態が「仲介(媒介)」で、売主がリノベーションを行った中古マンションに多くみられるリノベーション業者や、新築戸建に多く見られる建売業者などの不動産業者であれば、ほとんどの場合で売主である不動産業者か仲介手数料を受け取ることができます(成約報酬の意味合いもある)。
そのため、買主から受け取ることができる仲介手数料については、無料や半額、割引とすることが可能です。
売主が個人の場合
取引様態が「仲介(媒介)」で、売主が個人である場合、その売主から仲介業務を依頼された不動産会社自らが買主を見つけて成約すれば、売主からも買主からも仲介手数料を受け取ることができます。
しかし、売主から仲介業務を依頼された不動産会社は、自ら買主を探すだけではなく、その情報を公開して広く買主を探さなければなりません。売主と結ぶ媒介契約(仲介業務を行うために結ぶ契約)によっては、全ての不動産業者が閲覧できる、業者用のデータベースに登録することが義務付けられているのです。もし、この情報を見た別の不動産会社が買主を見つけてきた場合、それぞれの不動産会社は買主か売主のいずれか一方からのみ、仲介手数料を受けとることが許されるのです。
つまり、売主に仲介を依頼された不動産会社Aが買主を探している時に、別の不動産会社Bが買主を見つけてきて売買契約を成立させた場合には、買主から仲介手数料を受け取ることができるのは不動産会社Bになり、売主から仲介手数料を受け取ることができるのは不動産会社Bになります。
不動産会社Aは売主からのみ、不動産会社Bは買主からのみ仲介手数料を受け取ることができないということは、仲介手数料を割引することはできたとしても、無料とすることはできません。
仲介手数料の上限はあるが下限はなし
請求できる仲介手数料の上限額はどのように決められているのでしょうか?また、なぜ利益を削って経営を成り立たせることができるのでしょうか?核心に迫ります。
法律で決められているのは上限であり、0円でも何も問題はない
仲介手数料については、消費者保護の観点からその上限額が法律で制限されています。根拠法は宅地建物取引業法第46条であり、「売買価格の3%+6万円(税別)」という速算式で計算されます。
しかし、これはあくまでも上限額であり、下限額の決まりはありません。つまり、不動産会社によって割引をすることは何ら問題ありません。もちろん、買主と売主の両方から仲介手数料を全額もらっても、それぞれから半額ずつもらっても、どちらか一方を無料としても良いのです。
最近になってようやく、仲介手数料を無料や割引とする不動産会社が増えてきましたが、これまでそのような不動産会社が少なかったのは、あくまでも業界の暗黙のルールであったといえるでしょう。不動産取引は専門性が高く重い責任を負うことから、料金の妥当性が判断されづらかったのかもしれません。
仲介手数料無料の不動産会社はサービスが悪くなる?
仲介手数料は、希望条件に合う物件を見つけることができた場合に支払う報酬ではありません。不動産という高額かつ生活に直結する売買契約を、専門家が中立の立場でサポートし、かつ、契約書作成や住宅ローンのあっせん、重要事項説明など、契約に関する煩雑な手続きを代行するという業務の対価という意味合いも含まれます。
それだけ専門性の高い業務ですから、報酬が高くなるのは致し方ないという意見がある一方で、全ての不動産会社が当たり前のように仲介手数料の上限額を報酬とすれば、不動産会社同士の競争や、自助努力が生まれないというのは先に述べたとおりです。
不動産売買契約の仲介手数料は100万円以上の金額となることもありますから、「利益を削ればそれだけ契約数を稼がなくてはならない。結果的にサービスが雑になるのでは?」と心配される方もいらっしゃいます。もちろん、仲介手数料の値引き競争によって、サービスの質が落ちるようでは本末転倒でしょう。そもそも仲介業務を行うのであれば、義務とされているサービスを省略することはできないのです。
そして、サービスの質はそのままに、多くの企業が当たり前のように行っている社内のコストカット(人件費や光熱費などの経費削減)や、過剰な広告費を削った効率的な営業手法などを駆使しながら、企業努力で仲介手数料無料を実現している不動産会社も確かに存在するのです。
仲介手数料無料を謳っていても中には悪質な不動産会社もある
企業努力で仲介手数料を無料とする善意な不動産会社がいる一方で、仲介手数料無料という文言だけをアピールし、実質的には別の名目で費用を上乗せしているような悪質な不動産会社も存在します。そのような悪質な不動産会社の手口を、いくつかご説明いたします。
通常ではかからない名目で料金を上乗せしている
不動産売買は、一般の方々が毎日行うような日常的な取引ではないですから、その取引の明細書を見たところで、それぞれの名目が不動産取引に必要なものなのかどうかについて、判断するのは難しいでしょう。
たとえば、コンサルティング手数料や書式代、当社事務手数料などの名目は、不動産売買に必ず必要とされる費用ではなく、不動産会社が勝手に名目を作り上げている可能性が高いといえます。不動産会社が受け取ることができるのは、あくまでも「仲介手数料」であることを、念頭に入れて確認してみましょう。
また、それぞれの名目の費用が、妥当かどうかについてもチェックする必要があるでしょう。特に、ローン事務手数料や司法書士依頼費用など、不動産会社が代行してくれる事務作業について、料金が上乗せされていないか、確認するとよいでしょう。
売買代金に仲介手数料分の料金が紛れ込んでいる
なかなか気付きにくいのが、不動産の売買代金に仲介手数料分の料金が上乗せされている場合です。上乗せといえども、売買契約書は売主も買主も受領するものですから、買主の契約書だけ売買代金を上乗せすることはできません。
しかし、売主である業者と不動産仲介業者が仲間内、いわゆるグルだったらどうでしょうか。仲介手数料無料を大々的に謳ってお客様をたくさん連れてくる代わりに、売買代金の中に不動産仲介業者の取り分が上乗せされていれば、消費者は結果として損をしていることになります。
このような被害に遭わないようにするためには、購入しようとしている物件周辺の類似物件についてあらかじめ相場を調べておくなど、インターネットを利用して広く情報を集めておくと予防につながります。また、不動産会社そのものの評判をインターネット上で調べることも有効ですが、インターネット上の情報は匿名性が高い情報です。全ての情報を鵜呑みにせず、情報を正しく取捨選択しながら、見極める必要があるでしょう。
こちらの記事では、仲介手数料無料にの注意すべき4つのデメリットと対処方法をさらに詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
おわりに 仲介手数料は不動産会社の自助努力で割引できる費用である
例えば、携帯電話料金が日に日に安くなっているように、時代の変化と共に、消費者に対する過剰な負担を減らそうという動きがあることは間違いありません。
確かに不動産取引の仲介業務は専門的な知識を必要とするうえで責任も重たく、稼働がかかる業務ではありますが、無料や半額、割引とする不動産会社が存在している以上、これまで当たり前のように法律で決められた上限額まで徴収されてきた仲介手数料についても、見直される時代にきているのではないでしょうか。
この記事を監修した人

宅地建物取引士小林弘卓
長野県軽井沢生まれ、群馬県高崎市育ち。教員免許を取得したのち、教育関係の仕事に従事も、現場にて母子家庭や貧困家庭を目の当たりにし、何か役に立つことはできないかと決起。ファイナンシャルプランナー2級およびAFP、宅地建物主任者の資格を取得後、家計のやりくりから投資運用などお金のアドバイスだけではなく、様々なお悩み事を第3者の視点でアドバイスすることを目的とした「トータルアドバイズ」代表として活動。九星気学鑑定士としての人生相談も好評を得ている。