浸水想定区域の不動産は売却できる?重要事項説明や相場について解説

近年、「数十年に1度の大雨」が毎年のように発生しています。
国土交通省の調査によると、大型台風が頻発した2019年の被害総額は約2兆1,500億円にものぼり、津波以外の年間水害被害額としては1961年の統計開始以来最大となるなど、水害による被害は年々増加している状況です。

特に、河川周辺は洪水などによる被害を受けやすい立地環境です。危険と判断される場所については、行政が公表している「洪水浸水想定区域図」や「洪水ハザードマップ」により確認することができるため、近年はこれら資料を基に物件の購入可否を決める検討者も増えていると言われています。

また、2020年の法律改正によって、不動産売買や賃貸における重要事項説明の際は、水害に関する情報提供を行うことが義務付けられるなど「浸水想定区域に該当しているかどうか」は不動産売却において重要なポイントとなっているのです。

本記事の主な内容は以下のとおりです。

  • 浸水想定区域は、河川が氾濫した場合に「浸水する危険性が高い場所」を示した区域
  • 想定される大雨は「1000年に1回」である「想定しうる最大規模の降雨」
  • 2020年の法律改正によって重要事項説明における水害に関する情報提供が義務付けられた
  • 浸水想定区域だからといって売れないわけではない
  • まずは浸水履歴を調べてみよう

浸水被害は地震による倒壊などにと比べると見た目の被害は少なくも思えます。しかし、たとえ床上にわずかでも浸水すれば、壁紙や断熱材が水を吸い上げてカビが蔓延し、天井を含め広い範囲の修繕が必要となる場合もあります。この場合、修繕費用は数百万円にのぼることも珍しくはありません。

今後も水害に対する注目度は高くなると考えられます。そのため売主の立場としても、所有不動産の水害情報についてはしっかり理解したうえで売却活動を行うことが大切です。

今回は不動産売却を検討されている方にむけて、浸水想定区域の不動産のことや基礎知識や相場などについて幅広く解説していきます。

浸水想定区域とは?

浸水想定区域とは、河川を管理する国や都道府県が、降雨で氾濫した場合に「浸水する危険性が高い場所」を示した区域のことを言います。2001年の水防法改正で区域指定が導入され、降雨量や堤防の場所などに基づき、洪水による重大な被害が生じる可能性がある区域や浸水の深さを公表しています。

なお、想定される大雨は「1000年に1回」である「想定しうる最大規模の降雨」です。導入当初は「50~150年に1回程度」の大雨を想定していましたが、近年の豪雨災害の多発を踏まえ、2015年の改正により降雨条件が厳しくなりました。

浸水想定区域の確認方法

浸水想定区域は下記2つの資料により確認することができます。

  • 国および都道府県による「洪水浸水想定区域図」
  • 区市町村による「洪水ハザードマップ」

国および都道府県による「洪水浸水想定区域図」

国土交通省および都道府県では、水害による被害の軽減を図るため、想定し得る最大規模の降雨により河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域を「洪水浸水想定区域」として指定しています。

そして、大雨で河川が増水し、その河川から水が溢れる、あるいは堤防が破堤したときに起こりうる浸水想定区域および水深、浸水継続時間を「洪水浸水想定区域図」として公表しています。
洪水浸水想定区域図は国土交通省のホームページから閲覧することが可能です。

区市町村による「洪水ハザードマップ」

市町が作成する「洪水ハザードマップ」でも浸水想定区域を確認することができます。
洪水ハザードマップは、洪水浸水想定区域図に加え、さらに避難場所や避難経路等、避難行動をとる際に必要な情報を図示したものです。

洪水浸水ハザードマップは、先ほどの洪水浸水想定区域図に「さらに詳細な情報が記載されたマップ」と認識しておくと良いです。洪水ハザードマップは役所の行政資料コーナーで閲覧できるほか、行政によってはインターネットなどで確認することも可能です。

(※)参考:ハザードマップポータルサイト
(※)参考:洪水浸水想定区域図・洪水ハザードマップ

浸水想定区域の物件は売れない?

「浸水想定区域の物件は売りづらい」そう思われている方も少なくありません。しかし、先述のとおり洪水浸水想定区域はあくまで「最大規模の大雨」が想定条件であるため、直ちに水害の危険が及ぶことを示唆しているわけではありません。

また、河川エリアは河川敷や河川公園の豊かな自然を享受することができ、住環境に優れていることも事実です。購入者側も仲介会社からの説明により洪水の危険性を理解していることが前提であり、現在の相場価格はエリアが抱える洪水リスクが織り込まれた価格となっているのです。

そのうえ、河川周辺は基本的に浸水想定区域に指定されていることがほとんどです。所有する不動産が浸水想定区域に該当しているからといって「購入ニーズが無いのではないか」と心配される必要はないのです。
ただし、想定被害の深刻度によって価格差が生じてしまうことも事実です。特に昨今は歴史的な大雨が頻発している状況であり、購入検討者も水害に対する意識が高まっています。

2020年からは重要事項説明の際に水害に関する情報提供を行うことが義務付けられるなど、水害の有無が重要視される傾向にあります。そのため、想定される浸水被害が深刻である場合、売却価格への影響は年々増加しているということは認識しておかなければいけません。

なお、売却における注意点は下記記事でも解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

浸水想定区域にある物件をなるべく高く売るには?

浸水想定区域にある物件をなるべく高く売るためにも、下記2つのポイントには意識しましょう。

  • 浸水履歴を確認しておく
  • エリアに精通した仲介会社に依頼する

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浸水履歴を確認しておく

洪水浸水想定区域は「将来の大雨による被害」を想定しています。しかし、実はもっと重要なのは「これまで浸水したことがあるか」という事実です。当然、これまでに内水を含めて浸水したことがある場合、今後も水害の被害に遭う可能性が高いと判断されてしまいます。

逆に、浸水想定区域であっても浸水履歴が無い場合、ある程度の安全性の担保ができるため、売却する上での大きなアピールポイントとすることができるのです。

各行政では「浸水履歴」を開示しています。浸水想定図としてマップに履歴範囲を記している行政、あるいは情報保護の観点から町名までの記載に留めている行政など開示方法は様々ですが、本格的な売却を前に、まずはご自身で確認することをおすすめします。

エリアに精通した仲介会社に依頼する

最も重要なことは「エリアに精通した仲介会社に依頼する」ということです。
河川周辺は浸水リスクがある一方、交通利便性が高く、また豊かな自然が享受できる住環境の優れたエリアが多いと言えます。

アピールポイントの多いエリアだからこそ、精通した仲介会社に依頼することは、検討顧客の獲得や好条件での売却実現性を高めることに直結すると言えるのです。

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おわりに:売却前に「ハザードマップ」と「浸水履歴」をチェックしよう

最大級の大雨が頻発している昨今、水害に対する意識は非常に高まっています。
そのため「浸水想定区域に該当しているかどうか」は不動産売却において重要なポイントとなっています。

浸水想定区域は、河川を管理する国や都道府県が、降雨で氾濫した場合に「浸水する危険性が高い場所」を示した区域のことを言います。この浸水想定区域は国および都道府県に作成する「洪水浸水想定区域図」、もしくは市区町村が作成する「洪水ハザードマップ」で確認することができます。

売却する際はこれらの資料に加えて行政窓口で「浸水履歴」を確認しておくことをおすすめします。これまでに浸水想定区域であっても浸水履歴が無い場合、ある程度の安全性の担保ができるため、売却する上での大きなアピールポイントとすることができるのです。

河川周辺は浸水リスクがある一方、豊かな自然が享受できる住環境の優れたエリアが多いと言えます。したがって、アピールポイントの多いエリアだからこそ、自然リスクのハンデに注目するよりも、まずは精通した仲介会社に依頼できるよう注力することをおすすめします。

この記事を監修した人

スターフォレスト代表取締役増田浩次(ますだこうじ)

埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。

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