不動産の任意売却とは?通常売却・競売との違いやメリット・デメリットも解説

住宅ローンの返済が不可能となった場合、解決手段の一つとして「任意売却」があります。
任意売却は、住宅ローンの滞納によって一括返済を求められた際、金融機関の合意の上、残債を残した状態で売却する方法です。
住宅ローンの返済が困難となった場合、借主である債務者が取る方法は「一括返済」と「任意売却」、そして強制的な売却である「競売」の3つです。
この中でも任意売却は実現性が高く、かつ債務者にとっても比較的メリットが多いことから、最も採用されている方法です。
本記事の主な内容は以下のとおりです。
- 滞納が一定期間続くと金融機関から「一括返済」を求められる
- 任意売却は金融機関の合意の上、残債を残した状態で売却する方法
- 任意売却は競売よりもはるかに債務者のメリットが大きい
- 任意売却を認めない金融機関もある
- 任意売却を利用する場合はなるべく早く相談することが重要
2021年8月現在、新型コロナウイルスの影響によって、住宅ローンの返済が困難となる方は飛躍的に増加している状況です。
経済情勢が非常に不安定な中「住宅ローンの支払い不能」はどなたにとっても可能性があります。そのため、現時点で懸念が無い方も、実際に支払い不能となった場合にはどの様な方法があるか、事前に把握しておくことが重要です。
今回は任意売却について、通所売却・競売との違いやメリット・デメリットについても解説していきます。
目次
不動産の任意売却とは?
「任意売却」とは、住宅ローンの滞納によって金融機関から請求された一括返済に対応できない場合に、金融機関の合意により「残債を残す前提で売却する方法」です。
住宅ローンは、滞納してから6ヶ月程度が経過すると、借主(債務者)がローンを分割して支払う権利(期限の利益)が消失する契約となっています。この権利が消失することで、貸主(債権者)である金融機関は債務者に対し住宅ローンの一括返済を要求します。
この一括返済が困難である場合、金融機関は担保としている不動産を裁判所に申し立てのうえ強制的に売却し回収します。この強制売却を「競売」と言います。
競売による売却価格は、相場価格よりも大幅に低くなることがほとんどです。さらに、滞納による遅延損害金が発生するなど、債務者にとって経済的損失が大きくデメリットしかありません。
また、任意売却では残債を残すことが前提とされています。不動産売却をする際は、登記簿に設定されている「抵当権」を抹消しなければ、所有権を買主に移転することができません。通常、抵当権が設定されている場合は現金一括返済や借り換えなどによってローンを完済し抵当権を抹消しますが、任意売却ではそもそも完済が出来ないため、残債は売却以後、分割して返済することが一般的です。
初めて不動産売却を検討している方は、まずはこちらからお読みいただくとスムーズに理解できると思います。
ぜひご覧ください。
任意売却ができる場合・できない場合
任意売却は現時点ではほとんどの場合で認められています。しかし、下記のような状況である場合は任意売却ができない可能性があります。
そもそも金融機関が認めていない
任意売却は債権者側にとってもリスクを伴う方法であるため、基本方針として任意売却を認めない金融機関も存在しています。
したがって、残債を残す前提ではこのような金融機関の合意を得ることは難しく、合意を得られるのは売却によって全額返済できる見込みのある場合など限定的と考えられます。
共同名義人・連帯保証人の合意が得られない
任意売却には金融機関のみならず、共同名義人や連帯保証人がいる場合はそれらの合意が必要です。
任意売却するための時間が無い
任意売却による販売開始後3~6ヶ月経過しても成約も至らない場合、債権者は並行して競売を申し立てることが通例です。この場合、競売による開札日前日まで任意売却は可能であるものの、実質的には開札日の1ヶ月前までには買主が決定していなければ、任意売却における成約までの手続きが完了できません。
任意売却のメリット・デメリット
任意売却のメリット
- 相場価格で売却できる可能性がある
- 周辺住民に事情を知られずに売却できる
- 売却後の残債は分割返済することができる
相場価格で売却できる可能性がある
任意売却は売却に至る関係各所との手続きが多いという点以外、通常売却と条件は変わりません。そのため、相場価格で売却できる可能性が十分あると言えます。
周辺住民に事情を知られずに売却できる
競売では競売物件としてインターネットや新聞などで告示されるため、場合によっては周辺住民に困窮している状況を察知される恐れがある一方、任意売却では通常売却と外見上は変わらないため、このような心配がありません。
売却後の残債は分割返済することができる
売却後の残債は分割して返済することができます。毎月の返済額は金融機関との協議により債務者の経済状況を加味したうえで決定され、毎月1~5万円程度が通例とされています。
任意売却デメリット>
- 信用情報機関に登録される可能性がある
- 債権者の想定売却価格と相場価格に乖離が発生することがある
- 仲介会社選びが難しい
信用情報機関に登録される可能性がある
住宅ローンを3ヶ月以上滞納した場合、信用情報機関に登録される可能性があります。信用情報機関に登録されることを所謂「ブラックリストに載る」と言われており、7年間登録が継続され、その期間中は他の融資審査などに大きな影響が出る可能性があります。
債権者の想定売却価格と相場価格に乖離が発生することがある
任意売却が開始できるとしても、そもそも債権者が想定する売却価格が相場よりも高く、販売活動が難航する恐れがあります。この場合、先述のとおり販売活動が長引くことにより、最終的に競売となってしまうリスクがあります。
仲介会社選びが難しい
任意売却は通常売却よりも法律知識や金融機関との交渉などの専門的な経験が必要である一方、行政によるしっかりとしたガイドラインが無く「任意売却専門」や「任意売却の経験豊富」など根拠無き広告展開が可能な状況です。
さらに、任意売却は特殊な売却方法であるからこそ、大手仲介会社であったとしても「大手で安心して任せたのに、結局競売になってしまった」というケースも珍しくありません。
不動産の任意売却の流れ
任意売却のスタートから完了までは以下の様な流れで進みます。
- 任意売却の相談
- 債権者との価格交渉
- 仲介会社との媒介契約
- 販売活動
- 配分案の作成
- 売買契約
- 決済・引渡し
上記の中で、任意売却として特殊な項目は「債権者との価格交渉」と「配分案の作成」です。それ以外は通常の売却と違いがありません。
債権者との価格交渉
任意売却での販売価格は債権者が決定します。つまり、所有者や仲介会社が販売価格を決定することが出来ないため、仲介会社としてはなるべく相場価格と乖離の無い、確実性のある価格を金融機関と交渉する必要があります。
配分案の作成
配分案の作成は、売却代金の内訳を決めていく作業です。ここでは、売却代金から金融機関の回収金のほか、仲介手数料や司法書士報酬、債務者の引っ越し費用など、売却代金からどの項目をどの程度捻出するのかを決めていきます。
不動産の任意売却時の注意点
任意売却を利用する場合は以下3つのポイントに注意が必要です。
- どの仲介会社でも対応できるわけではない
- 必ず売却できるとは限らない
- 自己破産の可能性もある
重要なことは「任意売却で万事解決は無い」ということです。
任意売却は通常売却よりも特殊かつ高度な知識や経験が必要であるため、任意売却を開始したにも関わらず、仲介会社の能力不足が原因で競売に至るケースも少なくありません。
また、任意売却では、売却後に残債が残ることを前提としています。生活苦により残債の分割返済が困難である場合は「自己破産」という選択に迫られるリスクもあるのです。
当然、自己破産をすれば、ブラックリストに載る以上に社会的な信用が失われます。「任意売却すれば大丈夫」と安易に思うのではなく、売却後の生活も慎重に考えながら判断していく必要があるのです。
おわりに:任意売却を利用する場合は金融機関へは早めの相談を
任意売却は金融機関の合意の上、残債を残した状態で売却する方法です。
売却後の残債は分割返済することができ、一般的には毎月1~5万円程度で設定されると言われています。
任意売却は強制的な競売とは異なり、所有者が自主的に売却する形態であるため、販売開始に至るまでの関係各所との協議や手続きなどを除き、通常の売却と変わりません。
そのため、任意売却は「相場価格で売却できる可能性があること」「周辺住民に売却事情を察知されない」など債務者のメリットは大きいと言えます。
ただし、滞納から時間が経てば債権者である金融機関は競売の手続きを開始する可能性があります。またそもそも任意売却を受け付けていない金融機関も存在するため、返済不能の恐れがある場合は早めに金融機関に相談することが重要です。
この記事を監修した人

スターフォレスト代表取締役増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。