不動産売却における税金の種類と節税方法についても解説

不動産売却にかかる「税金」は、他の諸費用と比べてあまり注目されることがありません。
そもそも、不動産に関わる税金は普段の生活では馴染みがなく、税金を支払う過程で確定申告が必要となるなど、特に会社員の方で不動産の税金について正確に理解している方は少ないと言えます。
しかし、税金は対象となる金額が高いほど、税率や税額も高くなる仕組みです。不動産は高額であるため、課税対象となる場合は大きな支出が発生する可能性があるため注意が必要です。
本記事の主な内容は以下のとおりです。
- 主に4つの税金が発生する可能性がある
- 「印紙税」は契約書を作成する際に発生する税金
- 「登録免許税」は登記簿の内容を変更する場合に発生する税金
- 「不動産譲渡所得税」と「住民税」は譲渡益が発生した場合に課税される税金
- マイホームや空き家を売却する場合は非常に大きな軽減措置がある
不動産売却では一律に税金が発生するわけではありません。売買代金や所有期間など個別具体的な状況によって大きく異なります。
今回は不動産売却を検討されている方に向けて、売却時にかかる税金の種類と節税方法などについて詳しく解説していきます。
目次
不動産売却時にかかる税金は3つ
不動産売却では主に4つの税金が発生する可能性があります。
- 印紙税
- 登録免許税
- 不動産譲渡所得税
- 住民税
印紙税
「印紙税」とは、「課税文書」と言われる税法で定められた文書を作成した際に納める税金です。
不動産売却においては、売買契約書が課税文書に該当するため、売買代金に応じた印紙を貼付する必要があります。
2021年8月現在における印紙税額は下記のとおりです。なお、記載税額は2023年3月31日までの間に作成された文書を対象とした、軽減措置後の金額です。
- 10万円超50万円以下:200円
- 50万円超100万円以下:500円
- 100万円超500万円以下:1千円
- 500万円超1千万円以下:5千円
- 1千万円超5千万円以下:1万円
- 5千万円超1億円以下:3万円
- 1億円超5億円以下:6万円
- 5万円超10億円以下:16万円
- 10億円超50億円以下:32万円
- 50億円超:48万円
(※)参考URL:国税庁
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/pdf/0020003-096.pdf
登録免許税
「登録免許税」とは、抵当権の抹消や住所変更が必要となる場合に発生する税金です。
不動産売却する際は、住宅ローンを借りた際の抵当権が残っている場合や売主の住所が現在のものと異なる場合、それらを抹消・変更の登記をしなければ、所有権を買主に移転できないことになっています。
当然、住宅ローンを利用していない、あるいは既に完済して抵当権が抹消されている場合や、登記簿上の住所が現住所である場合は、そもそも登記が必要無いため登録免許税は発生しません。
不動産譲渡所得税
「不動産譲渡所得税」とは、売却によって「売却益」が発生した場合に課せられる税金です。
ここでの「売却益」とは、売買代金(譲渡価格)から取得費用と売却費用を差し引いて算出された金額のことを指します。つまり、不動産譲渡所得税はあくまで「手元に残った利益」に対して課せられる、ということがポイントです。
「取得費」は、物件を取得した際の購入代金や仲介手数料等の諸費用を含めた総額です。また、譲渡費用は売却にかかる諸費用のことを表しています。
なお、取得が相続によるものなど、取得費の金額が不明である場合は「収入金額の5%」を計算上の取得費として見なすことができます。
売却益は専門用語では「譲渡所得」と呼ばれます。そして、実際の税額は下記式のとおり、譲渡所得から後述する「特別控除」を更に差し引いた「課税譲渡所得金額」に対して所定の税率が課せられる仕組みです。
- 課税譲渡所得金額=譲渡所得-特別控除
住民税
「住民税」は不動産譲渡所得税と同様に「売却益」が発生した場合に課せられる税金です。
不動産譲渡所得税が国税であるのに対し、住民税は地方税です。納める先が異なるため、税額も別々に計算され別々に徴収されています。
なお、課税される対象は不動産譲渡所得税と同じく「課税譲渡所得金額」です。
不動産譲渡所得税と住民税は所有期間によって税率が変わる
不動産譲渡所得税と住民税は所有期間によって課せられる税率が異なります。
5年以下が「短期譲渡所得」、5年超が「長期譲渡所得」として分類され、下記のように長期譲渡所得の方が、税率が低くなっています。
- 短期譲渡所得(5年以下):所得税30.63%、住民税9%
- 長期譲渡所得(5年超):所得税15.315%、住民税5%
なお、所有期間は不動産を売却した年の1月1日現在で決定されます。したがって取得した年から数えて6回目の1月1日を迎えたとき、5年超の所有として認められます。
つまり、仮に取得から実質5年間が経過していても、5年経過後の1月1日を迎えていなければ長期譲渡所得として認められないことに注意が必要です。
税金を支払うタイミング
課税対象となった場合、税金を支払うタイミングは下記のとおりです。
- 印紙税:売買契約時
- 登録免許税:決済時(物件引渡し時)
- 不動産譲渡所得税:確定申告後速やかに
- 住民税:その年の6月以降
印紙税となる「収入印紙」は郵便局などで購入することができます。売買契約前に売主・買主それぞれが購入し、当日持参します。実際の支払いは購入時ですが、収入印紙を売買契約書に貼付し、消印を押すことにより納税したこととみなされます。
また、登録免許税が発生する場合は、登記を依頼する司法書士に対して司法書士報酬と併せて支払うことが一般的な方法です。司法書士が売主に代わり、登記申請時に預り金を登録免許税として納税します。
さらに、不動産譲渡所得税と住民税が発生する場合、不動産譲渡所得税は確定申告後速やかに、住民税はその年の6月以降に行政から請求書が送付され、振込等により支払います。
不動産売却における税金は節税できる?
不動産売却による税金には軽減措置があり、要件を満たす場合は確定申告することにより先述した「特別控除」や「特例」を受けることができます。
- マイホームの3,000万円特別控除
- マイホームの売却による軽減税率の特例
- マイホームの買い替え特例
- 空き家譲渡による3,000万円特別控除
「不動産購入時」に課税される消費税の内訳と概算、節税のための不動産会社選びについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ぜひご覧ください。
マイホームの3,000万円特別控除
マイホームを売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除することができます。なお、長期譲渡所得または短期譲渡所得どちらの場合でも適用されます。
マイホームの売却による軽減税率の特例
マイホームを売却した年の1月1日現在で、所有期間が10年超えている場合は特例により税率が軽減されます。
- 6,000万円までの部分:所得税10%、住民税4%
- 6,000万円を超える部分:所得税15%、住民税5%
この特例に該当する場合においても、課税譲渡所得金額はマイホームの3,000万円特別控除を適用することが可能です。
マイホームの買い換え特例
マイホームを売却した前年から翌年までの3年間にマイホームの買い換えをした場合、下記の要件に該当する場合には、課税を繰り延べることができます。
- 譲渡価格が1億円以下
- 売却した年の1月1日現在で所有期間10年超、居住期間10年以上
ただし、この特例を利用する場合は「マイホームの3,000万円特別控除」と「マイホームの売却による軽減税率の特例」のどちらか1つしか利用することはできません。
空き家売却による3,000万円特別控除
相続などで空き家を取得し売却する場合は、下記のような一定要件をクリアすることで譲渡所得から3,000万円を控除することができます。
- 被相続人が死亡した日以後3年を経過した日の属する年の12月31日までに売却すること
- 被相続人が亡くなった時点で一人暮らしであること
- 昭和56年5月31日以前に建築された建物とその敷地であること
- 相続から売却するまで継続して空き家であること
不動産売却にかかる税金の事例
最後に例として、下記条件における不動産譲渡所得税と住民税について見ていきましょう。
- 用途:マイホームとして10年前に購入
- 売却価格:6,000万円
- 購入価格:5,000万円
- 取得のための諸費用:300万円
- 取得のための諸費用:200万円
上記条件における譲渡所得は下記のように500万円と算出されます。
- 6,000万円-5,000万円-300万円-200万円=500万円
控除が無い場合には、この500万円に対して長期譲渡所得(所有期間5年超)の税率が課税されます。しかし、今回はマイホームの売却であり3,000万円の特別控除が適用されるため課税譲渡金額は0円です。したがって、不動産譲渡所得税と住民税は発生しません。
この様に、不動産譲渡所得税および住民税は高い税率が設定されている一方、マイホームの売却における軽減措置は非常に充実しているため、ほとんどの取引で課税されていないのが実情です。
不動産に関する税金知識が一般に知られていないのは、この様な状況が理由として考えられます。
おわりに:不動産売却の税金は高額だが、軽減措置が非常に充実している
税金は対象となる金額が高いほど税率や税額も高くなる仕組みであるため、高額である不動産を売却した場合、大きな支出が発生する可能性があります。
不動産売却にかかる主な税金は「印紙税」「登録免許税」「不動産譲渡所得税」「住民税」の4つです。この中でも不動産譲渡所得税と住民税は税率が高く、対象となる場合は数十万から数百万円の課税額となります。しかし、特にマイホームの売却については軽減措置が充実しており、ほとんどの取引で不動産譲渡所得税と住民税は発生しないことが実情です。
いずれにしても、課税対象や税額、税率は売買代金や所有期間など個別具体的な状況によって大きく異なるため、ご自身の売却ではどのような税金が発生するのか、発生する場合はどの程度課税されるのか、事前に税務署や税理士に相談しておくことをおすすめします。
この記事を監修した人

スターフォレスト代表取締役増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。