相続した不動産を売却するには?流れ・手続き・注意点まとめ

不動産の所有者が亡くなった際は、不動産は故人の資産として相続人に相続されることが原則です。
そして相続人は所定の手続きを経た後、所有し続けるかもしくは売却を選択します。
もともと故人と同居されていた方や、相続不動産が収益物件である場合は所有を継続するケースもありますが、それ以外に特段活用方法が無い場合は売却を選択される方が多いです。
本記事の主な内容は以下のとおりです。
- 不動産を相続したら「相続登記」を行うことが原則
- 相続登記には期限が無いため、故人名義のまま放置されていることもある
- 相続登記をしないと後々のトラブルにつながる可能性がある
- トラブルを回避するためには手続きの「代表者」を決めておくことが大事
当然のことながら、相続は頻繁に起こることではありませんが、必ずいつかは発生します。そして、有事の際は慌ただしくも対応しなければいけないからこそ、事前に基礎知識を備えておくことが重要なのです。
今回は相続不動産を売却する際の流れや手続き、注意点などをご紹介していきます。
また、不動産売却で失敗しない方法やコツについて知りたい方は、弊社代表の沢辺がYoutubeで詳しく解説しておりますので、ご覧ください。
目次
相続した不動産をそのままにしておくのはNG
不動産の所有者が亡くなった場合、その不動産は相続人に相続されます。そして、相続を受けた相続人は所定の手続きに従って「相続登記」を行うことが基本です。
しかし、相続税の申告や納税とは異なり、相続登記は相続発生後のいつまでに行うといった法律による期限がありません。そのため、手間がかかるという理由から相続登記をせず、故人の名義のまま放置してしまう方も少なくないのです。
下記は相続しなかった場合に想定されるデメリットです。
- 不動産を売却できない
- 差し押さえのリスクがある
- 権利関係が複雑になる
- 遺産分割が難しくなる可能性がある
- 登記書類の入手が難しくなる場合がある
不動産を売却できない
相続登記が完了していない場合、謄本上は故人の所有が継続していることになります。そのため、法定の相続人であったとしても、不動産を売却することや不動産を担保にして融資を受けることはできません。
差し押さえのリスクがある
相続人の中で借金をしている方がいる場合、状況によっては債権者が「代位登記」を行い不動産が差し押さえられてしまう恐れがあります。
この登記によって、借金を完済しなければ差し押さえの状態は継続してしまうため、他の共有者が売却しようとしても名義を移転させることはできません。
権利関係が複雑になる
登記上を故人名義のまま放置していた場合、相続人の数が多くなるなど権利関係が複雑化する恐れがあります。相続の権利者が多くなれば、その分トラブルが発生するリスクも高くなり、いざ登記を行おうとしても誰を登記名義人とするかで意見が合わず、調整が難航してしまうケースも珍しくありません。
遺産分割協議が難しくなる可能性がある
相続人の高齢化などを理由に、遺産分割協議が難しくなる場合もあります。
相続人の一人が高齢化による認知症を発症した場合、法律行為である遺産分割協議は判断能力の欠如につき、認知症の相続人は単独で協議に参加することができず「成年後見人」を頼る必要があります。
成年後見人を立てるためには、所定の手続きを行い裁判所による審理を経なければなりません。したがって、早急に不動産を処分したい場合であっても、相続人の判断能力を理由に長期間を要してしまう恐れもあるのです。
登記書類の入手が難しくなる場合がある
相続登記には故人の住民票(除票)または戸籍の附票が必要となります。しかし、これらは役所での保存期間が決められているため、この期限を超えてしまうと相続登記時に入手困難となる場合があります。
相続した不動産を売るときの流れと準備すること
続いて、実際に相続が発生した際の売却までの流れを見ていきましょう。
- 遺産分割協議および協議書作成
- 相続登記
- 不動産売却開始
- 不動産売買契約・決済
- 売却代金の分配
遺産分割協議および協議書作成
故人の遺言書による相続人もしくは法定相続人による遺産分割協議および遺産分割協議書の作成を行います。遺産分割協議は相続人全員の署名捺印により完了しますが、相続人の中で内容に不服があり協議がどうしても進まない場合は、家庭裁判所への申立てによる遺産分割調停に入る場合もあります。
相続登記
遺産分割協議書の内容に従い、不動産の相続登記申請を行います。相続登記申請は、法令上、個人でも行うことが可能ですが、専門的な手続きとなるため通常は司法書士に報酬を支払って委託します。
不動産売却開始
相続登記が完了次第、不動産仲介会社に依頼して売却活動を開始します。
売却方法は一般的な不動産と同じく、仲介会社による査定後に媒介契約を締結し、不動産市場で広告を展開します。
不動産売買契約・決済
購入者が見つかれば不動産売買契約の締結および決済を行います。
売却代金の分配
決済により買主から売買代金を授受次第、遺産分割協議書の内容に従って分配します。以上で相続不動産の売却は完了です。
相続した不動産を売るときにかかる費用・手数料
相続不動産を売却する際には、主に以下の費用や手数料が発生します。
- 登録免許税
- 司法書士報酬
- 必要書類の取得費用
- 相続税
- 仲介手数料など
相続不動産を登記する際には、固定資産税評価額に0.4%乗じた金額の「登録免許税」を納めなければなりません。この登録免許税は「司法書士報酬」と併せて登記を委託する司法書士へ支払い、司法書士が法務局への登記申請時に納税する方法が一般的です。また、この登記申請には「戸籍謄本」や「印鑑証明書」など公的書類の提出が必要なため、それら書類の取得費用が発生します。
さらに、相続税の納税も必要です。ただし、相続税には基礎控除制度があり、配偶者は3,000万円、ほか相続人1人につき600万円を差し引いて残った金額に規定の税率を乗じて算出されます。
そして、売却が始まれば仲介手数料などの「諸費用」が発生します。
不動産売却にかかる諸費用の解説は下の記事で詳しく解説していますので、興味のある方は是非チェックしてください。
相続した不動産を売るときの注意点
相続不動産を売却する際は下記2点に注意しましょう。
- 売却窓口を1人に決めておく
- 売却可能価格を事前に決めておく
売却開始前は、どの不動産仲介会社に依頼し、どのように売却活動をするかを検討する期間でもあります。相続人が複数いる場合、既にこの時点で意見が合わず揉めてしまうケースがあります。
そのため、それぞれが別々に行動するのではなく、査定依頼や専門業者との打ち合わせは、相続人のうち1人が代表して行うことが理想的です。
さらに、売却開始前に売却可能価格も決めておくと良いです。実際に購入検討者が現れた際には「この価格なら売却を即決する」というラインを決めておくことで、最終的な判断に時間をかけず、よりスピーディーな売却の実現を図ることができるのです。
売却査定の基礎知識はこちらの記事で解説しています。
おわりに:相続が発生したら将来のためにも早めの相続登記が重要
不動産の所有者が亡くなった際は相続人に相続され、遺産分割協議を経て「相続登記」を行うことが原則です。ただし、相続登記は法律で期限が無く、手間がかかるという理由で故人名義のまま放置されているケースもあります。
相続登記がされていない場合、謄本上は故人名義であるため、そのままでは売却したり担保に入れて融資を受けることができません。また、時間が経過するほどに権利関係も複雑になる恐れがあることから、相続発生後はなるべく早く遺産分割協議を開始し、相続登記を済ませておくことが重要です。
この記事を書いた人

スターフォレスト代表取締役増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。
この記事を監修した人

株式会社ユナイテッドリバーズ代表取締役沢辺敦志(さわべあつし)
千葉県出身。自身の自宅購入時に、不動産仲介会社に不満を持ったことをきっかけに不動産売買仲介業を開業し、不動産仲介手数料無料機構イエフリをオープンさせる。
自身の苦い経験から、受付・接客業務に特にこだわってチームづくりを心がけてサービス運営している。
趣味は料理、二児の父。