不動産譲渡所得で得られる収入はいくら?特別控除についても解説

不動産売却後には「不動産譲渡所得税」が課税される可能性があります。
不動産譲渡所得税は売却益が出たときに課税される仕組みとなっており、場合によっては高額の納税額になる可能性もあるため注意が必要です。
本記事の主な内容は以下のとおりです。
- 不動産譲渡所得税は利益が発生したときのみ課税される
- 所有期間が長いほど税率が低くなる仕組みになっている
- 不動産譲渡所得は売買代金(譲渡価格)から「譲渡費用」と「取得費用」を差し引いた金額
- 条件をクリアすると「特別控除」が適用される
- 特別控除により、通常のマイホームの売却では課税されることはほとんどない
不動産譲渡所得税は売却物件がマイホームであることや相続により取得したものなど、条件によっては特別な控除を受けることが可能です。
今回は不動産売却を検討されている方に向けて、不動産譲渡所得税の基礎知識や計算方法、控除制度の仕組みなど幅広く解説していきます。
目次
不動産譲渡所得とは?
不動産譲渡所得とは、売買代金(譲渡価格)から「譲渡費用」と「取得費用」を差し引いた金額のことを指します。
不動産譲渡所得税は売買代金全額に対して課税されると思われている方もいますが、あくまで課税対象となるのは売却によって発生した「譲渡益」です。
売買代金すべてに課税してしまうと、納税額が極めて高額となってしまい、不動産流通性に悪い影響を与えてしまう可能性があります。
そのため、不動産譲渡所得税は利益である譲渡所得が発生したときのみ、その金額に対して所定の「所得税」と「住民税」が課税される仕組みとなっているのです。
不動産譲渡所得で得られる収入はいくら?
不動産譲渡所得は下記の式で算出されます。
- 不動産譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)
ここでの「取得費」とは、物件を購入した際の購入代金とその際に支払った仲介手数料や登記費用といった諸費用のことを指します。さらに「譲渡費用」は売却のために支払った仲介手数料や登記費用、印紙代など、こちらも諸費用全般が含まれます。
不動産譲渡所得は、売買契約書に記載され売買代金である譲渡価格から取得費用と譲渡費用を差し引いて残った金額となります。
不動産譲渡所得税の税額
不動産譲渡所得税の税額は先述した不動産譲渡所得に下記の税率を乗じて算出します。
- 長期譲渡所得(5年を超える場合):20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
- 短期譲渡所得(5年以下の場合):39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
上記のように、所有期間が5年を超えるかどうかで適用する税率が異なり、所有期間が長いほど税率が低くなる仕組みとなっています。
例えば3,000万円で買った不動産が2,000万円で売れ、仲介手数料などの諸費用が200万円かかった場合、譲渡所得は3,000万円-2,000万円-200万円=800万円です。
したがって、所有期間が5年以下では約20%を乗じた約160万円、所有期間が5年超の場合は約39%を乗じた約310万円が譲渡所得税として課税される計算となります。
不動産譲渡所得は特別控除の対象になる
不動産譲渡所得は特別控除の特例があり、条件を満たした場合は譲渡所得からさらに「特別控除額」を差し引くことができます。
特別控除が適用されるケースは複数ありますが、まずは下記3つをキーワードとして覚えておきましょう。
- マイホームの3,000万円特別控除
- マイホームの買い替え特例る
- 相続による3,000万円特別控除
マイホームの3,000万円特別控除
マイホームを売却したときは所有期間に関わらず、譲渡所得から3,000万円が控除されます。さらに、所有期間が10年を超えていれば、3,000万円控除後の譲渡所得への税率は通常の20%から14%に低減されます。
なお、通常のマイホームの取引においては、譲渡所得が3,000万円を超えることはほとんどありません。したがって、この3,000万円特別控除によって、ほとんどの方は実質的に不動産譲渡所得税が発生しない仕組みとなっているのです。
マイホームの買い替え特例
売却した年の1月1日の時点で、所有期間が10年を超えるマイホームを買い替えた場合は、譲渡所得への課税を繰延べすることができます。
ただし、買い替え先の住宅の床面積が50㎡以上であることや築25年以内であることなど、特例を受けるためには細かい条件があるため注意が必要です。
なお、この特例ではあくまで「繰り延べ」されるだけであるため、さらに買い替えた場合は繰り延べ分を含めて課税されることになります。
相続による3,000万円特別控除
平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売却し一定要件をクリアすると、譲渡所得から最高3,000万円が控除されます。
なお、この特例では次の4つの要件全てに当てはまることが要求されます。
- 相続開始の直前において被相続人のマイホームであること
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
ここでのポイントは「旧耐震建物」と呼ばれる築古の建物であること、そして区分所有登記されたマンションなどは適用外であることです。さらに、相続の開始があった日から3年経過した12月31日までに売却が完了していなければならず、適用を受けるためには物件の条件に加え、手続き上の条件もクリアする必要があります。
また、住宅ローン減税の改正についての情報はこちらからご覧いただけます。
おわりに:マイホーム売却による特別控除の対象であれば不動産譲渡所得税はほとんど発生しない
不動産譲渡所得税は売却に際して「利益」が発生したときに課税され、所有期間が5年以下である場合は約39%、5年超である場合は約39%と所有期間が長いほど税率が低い仕組みとなっています。
課税対象となるのは契約書に記載された売買代金ではなく売買代金(譲渡価格)から「譲渡費用」と「取得費用」を差し引いた「不動産譲渡所得」です。
さらに、不動産譲渡所得は特別控除の特例があり、条件を満たした場合は譲渡所得からさらに「特別控除額」を差し引くことができます。
特に、マイホームを売却した場合は所有期間に関係なく「3,000万円の特別控除」を受けることができます。通常のマイホームの取引においては、譲渡所得が3,000万円を超えることは滅多に無いため、この3,000万円特別控除が適用される場合、実質的に不動産譲渡所得税は発生しない仕組みとなっているのです。
この記事を監修した人

スターフォレスト代表取締役増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。