競売物件はやばい物件?購入する方法や購入時の注意点を解説

競売物件」と聞くと、ネガティブなイメージを持っている方もいるのではないでしょうか。「競売」で売却される物件は、売主がいないことや売却方法が一般的な方法と異なるだけで、物件自体はいわゆる「中古物件」と変わりません。

競売物件は、希望に近い物件が安く購入(落札)できる可能性があります。予算をあまり作れないけれどマイホームが欲しいと考えている方は、競売物件も視野に入れてみてもよいかもしれません。ただし、隠れた瑕疵などのリスクが伴うケースもあるため、競売物件の概要や評価方法を知った上で検討してみてください。

この記事では、競売物件の基礎知識や購入方法、購入時の注意点などを解説していきます。

「競売物件」とは?

「競売物件」は、「競売」で売買された物件のことを指します。

「競売」とは、「任意売却(※)」を選択しなかった場合にとられる売却手続き方法のひとつです。住宅ローンなどの返済ができなくなった不動産を、債権者(銀行などの金融機関)が差し押さえ、強制的に債権回収を図ります。債権者は裁判所に競売手続きを申し入れ、これが受理されると、裁判所が所有者に代わって入札形式で不動産の売却を行います。

(※)任意売却の詳しい解説はこちらの記事でご覧いただけます。

競売は下記のような流れで進みます。

  1. 不動産の所有者が住宅ローン返済不能になる
  2. 債権者による物件の差し押さえ
  3. 債権者による競売の申立て
  4. 裁判所による競売申立ての受理
  5. 裁判所による不動産の現況調査
  6. 競売の公開・入札・落札
  7. 債権者へ配当金(落札価格)の提供

競売物件は占有トラブルが多かった

競売物件はかつて様々なトラブルがありました。特に問題になっていた暴力団による占有トラブルに対しては、すでに対策がとられています。民事執行法が改正され、「競売における暴力団員の買受け防止策(※2)」が盛り込まれたことにより、このような占有者が居た場合は競売妨害として直ちに逮捕されることになっています。

一般消費者でも競売に参加しやすくなった

競売は、一部の不動産会社や個人投資家だけが入札するような、特殊な購入方法でした。近年では、一般消費者のための「競売不動産初心者セミナー(※3)」が開催されたり、「不動産競売物件情報サイト(※4)」で競売物件に関する情報を入手しやすくなったことで、一般消費者でも競売に参加しやすくなりました。

こちらは不動産競売物件情報サイトの検索結果ページです。不動産の画像や、入札期間、売却基準価格が掲載されていました。興味がある方は、公式サイトで物件を検索してみてください。


画像引用元:競売物件検索 | BIT 不動産競売物件情報サイト

(※)トラブル例参考:RETIO69
(※2)参考:暴力団員等の買受け防止制度
(※3)参考:一般消費者セミナー 参加お申し込み | 不動産競売流通協会(FKR)
(※4)参考:ホーム | BIT 不動産競売物件情報サイト

競売物件を購入するメリット

競売物件には、主に2つのメリットがあります。

  • 市場価格よりも安く物件を購入できる可能性がある
  • 珍しい物件を発見できる可能性がある

市場価格よりも安く物件を購入できる可能性がある

競売物件は、市場価格の50~70%程度(※1)で落札されるようです。なぜ安くなるのかというと、「通常の不動産取引とは手続きが異なること」や「隠れた瑕疵があっても責任を追求できないこと」、「買主に心理的抵抗感があること」などが主な理由となるようです。

「全国競売ネットワーク(※2)」に記載されていた不動産競売と通常の不動産取引を比べて大きく異なる点をまとめました。参考にしてください。

  1. 物件の所有者は売却を迫られているため、買主は所有者からの協力を得られない。
  2. 物件に潜むリスク(隠れた瑕疵)が購入後までわからない可能性がある。
  3. 競売物件は瑕疵担保責任を負わないため、損害賠償請求や契約解除ができない。
  4. 保証金や残代金が必要であり、一括で即納を求められる。
  5. 物件の引き渡しにおいて法定手続きが必要になるケースがある。

競売物件は、上記のような制約を減価要因として捉え、競売物件のマイナス要素を加味した価格の修正(競売市場修正)を行っています。マイナス要素を考慮して競売評価が行われた結果、市場価格よりも物件価格が安くなるのです。

(※1)参考:競売物件の価格が市場価格より安くなる理由とは?任意売却との価格差も解説 | おすむび|遠鉄の住まいと暮らしの総合メディア
(※2)参考:迅速・適正な競売評価

珍しい物件を見つけやすい

競売物件では、一般市場で出回らないような珍しい物件が存在しています。
たとえば、三角形の土地(不整形地)や極端に狭い土地などがあります。このような土地は需要がなく売却しにくいため、一般的には不動産会社が買取り、リフォームなどを行ってから売却します。そのため、このままの状態で売却されることは非常に珍しいのです。

資材置場の用途のために市街化調整区域の物件を探している、あるいは山林購入を検討している場合など、特殊な用途で不動産を探されている場合はチェックしてみるのもおすすめです。

競売物件を購入するデメリット

競売物件には、主に3つのデメリットがあります。

  • 物件の内見ができない
  • 契約不適合責任(瑕疵担保責任)など、通常では売主が負うべき義務がない
  • 住宅ローンの利用が難しい

物件の内見ができない

競売物件は、通常の不動産取引とは異なり、入札前に物件内に立ち入ることができません。法律上は内見制度が設けられているのですが、条件などがあるようです(※)。
また、売主がいないため物件説明もありません。そのため、入札参加者は競売物件詳細ページの内容と、「3点セット」と呼ばれる書類の内容から、入札参加の可否や評価額、詳しい現地の状況、周辺の環境などを判断する必要があります。

3点セットの内容

  • 物件明細書
  • 現況調査報告書
  • 評価書

3点セットは、最高裁判所が運営する「BIT 不動産競売物件情報サイト」で取得できます。
競売物件詳細ページの中に「3点セットのダウンロード」ボタンがあり、クリックするとPDF形式の書類をダウンロードできます。


※画像引用元:競売物件検索:詳細 | BIT 不動産競売物件情報サイト

(※)参考:競売物件の内覧はできますか?|株式会社 アイディーホーム

引き渡し時において売主が負うべき義務がない

通常の取引では、売主による物件の説明や、引き渡しまでに物件の状態を整えておくことなどが義務付けられています。しかし、競売物件においては売主がいないため、売主が通常行うべき隣地との境界確認や、付帯設備に関する点検や説明などは、購入者の立場として受けることができません。

さらに、仮に引き渡しを受けた後に第三者が占有していた場合、その立ち退き交渉は購入者自らが行わなければなりません。

契約不適合責任がない

引き渡し後の物件に瑕疵や契約内容と異なる点があった場合、通常の不動産取引では、民法の「契約不適合責任」により欠陥箇所の補修請求や契約解除請求を行うことが認められています。
しかし、競売物件の場合は売主がいないため、購入後に隠れた瑕疵や不適合点が見つかったとしても請求できません

ただし、評価書の内容と現状にあまりの乖離があった場合は、代金納付までの間であれば、売却許可決定の取り消しを申し立てることができます(※)。

(※)参考:20302010.pdf

住宅ローンの利用がしづらい

競売物件は、金融機関側が融資に難色を示す場合が多いと言われています。しかし、民事執行法第82条第2項(※)により、以前よりは住宅ローンが組みやすい状況になってきているようです。一部の銀行では、フラット35が利用できます。

(※)参考:競売不動産の買受手続と登記|名古屋市の登記、相続専門司法書士 相続、不動産、会社登記は名古屋総合へ|愛知県

競売物件の購入方法

競売物件の購入方法を確認しましょう。

まずは競売物件の情報を収集する

競売物件の情報は、物件が所在する裁判所の窓口や「 BIT 不動産競売物件情報サイト」、または一部情報誌や新聞で確認することができます。

「3点セット」を取得し、入札の検討を行う

「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」の3点セットを取得します。
3点セットは「入札の公告日」に「BIT 不動産競売物件情報サイト」で開示されます。裁判所により異なりますが、公告日から入札締切までは概ね3週間程度と言われています。入札予定者は、この期間中に物件の調査を行います。

入札の準備をする

入札には、物件の売却基準価格の2割以上の入札保証金と各書類が必要です。入札保証金は、落札されなかった場合、口座に返金されます。

入札時に必要な書類については、こちらに詳しく掲載されています。
入札等の手続について(入札等の手続の流れを閲覧できます。) | BIT 不動産競売物件情報サイト

裁判所で売却許可決定を取得する

裁判所の売却場か、「 BIT 不動産競売物件情報サイト」で開札結果の確認ができます。落札が確認できたら、裁判所で「売却許可決定(※)」を取得します。

売却許可決定とは、最高価買受申出人(最高額で落札したこと)であること、裁判所から売却を許可されたことを確定する手続きです。売却許可決定から1週間で、売却許可決定が確定されます。

(※)参考:売却許可決定の確定 | BIT 不動産競売物件情報サイト

代金納付と必要書類の提出をする

落札した場合は、必要書類の提出と入札価格から入札保証金を引いた残代金を納めます。書類の提出と代金納付をすると登記が行われ、所有権が買主へ移転されます。

また、代金納付手続に必要な書類については、こちらに詳しく掲載されています。
代金納付手続に必要な書類等 | 裁判所

競売物件を購入するときの注意点

競売物件は、隠れた瑕疵があるなどリスクが伴う可能性もあります。住宅購入を検討する際は、不動産投資用に安く購入したい場合など特別な事情がない限り、不動産会社を通じて購入する方法が賢明な判断だと言えます。

一般消費者においては、「割安感」を求めて競売物件を探すのではなく、希望に近い物件の探し方の“ひとつの手段”として利用するのが、上手な利用方法になりそうです。

おわりに:競売物件の購入は慎重な判断が必要

競売物件は、一般市場で販売されている物件よりも安く購入できる可能性があります。しかし、隠れた瑕疵などのリスクを伴うケースもあるため、一般消費者においては特別な事情がない限り、不動産会社を通じて一般市場で購入する方法がおすすめです。それでも競売物件を希望する場合は、慎重に判断して購入するようにしましょう。

一番お得に物件購入ができる不動産仲介会社をお探しの方は、こちらからご相談ください。

この記事を監修した人

スターフォレスト代表取締役増田浩次(ますだこうじ)

埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。

関連記事