フルローンはリスクが多い?頭金なしでも組める理由とリスク・注意点を解説

史上空前の低金利と言われている現在、住宅購入の頭金を入れない「フルローン」を利用する方が増えています。
さらに、物件代金のみならず購入にかかる諸費用を含めたすべての費用をローンで賄う「オーバーローン」まで登場しています。

確かに、低金利であることによって以前よりも支払い利息が少なくなったことお得感が増したこと、あるいは借入限度額や収入条件が緩和されたことで、購入できる方が増えたという事実はあるものの、フルローンはリスクが大きいという理由で、一般的にはあまりおすすめされていません。

自分の年収に対する最適な住宅ローン予算について知りたい方は、弊社代表沢辺が解説するYoutubeもぜひご確認下さい。

本記事の主な内容は以下のとおりです。

  • 「フルローン」は頭金を入れずに住宅購入代金のすべてをローンで賄うこと
  • 低金利政策により、頭金の有無を融資条件から外す動きがでてきた
  • フルローンは「誰でも・いくらでも」借りられるわけではない
  • フルローンはリスクが高いため、一般的にあまり良くないと言われている
  • 条件によってフルローンはメリットとなることもある

フルローンは一概に悪いものとは言えません。フルローンをして良い方と悪い方が存在するため、状況に応じて選択することが重要です。
今回は住宅ローンの利用を検討されている方に向けて、頭金なしでも組める理由とリスク・注意点などを解説していきます。

住宅ローンのフルローンとは?

「フルローン」とは、頭金を入れずに住宅購入代金のすべてをローンで賄うことを言います。
以前は頭金として自己資金から10%~20%を充当し、残りは住宅ローンを組んで支払うことが一般的でした。さらに、頭金の有無は金融機関の借入審査や設定金利に大きく影響する項目であったため、基本的に自己資金が無ければ住宅を購入することができない状況だったのです。

しかし、現在は政府による超低金利政策によって住宅ローン金利が非常に低く推移しているため、各金融機関はなるべく多くの融資を実行するために、頭金の有無を融資条件から外す動きが出てきたのです。

さらに、最近では購入代金のみならず購入にかかる諸費用を含めた「オーバーローン」まで登場しています。オーバーローンは与信水準がある程度高くなければ利用することができませんが、いずれにしても購入層の裾野が広がったことに間違いはありません。

フルローン利用時の条件

住宅ローンの限度額は、一般的に「返済負担率」と呼ばれる年収に占める年間の返済額の割合に応じて算出されます。
そして、現在の各金融機関のスタンスとしては、勤続年数や所属会社によって判断される与信水準に問題がなければ、頭金が無くても住宅ローン限度額の範囲内であれば融資承認を下すところが多い状況です。

したがって、フルローンは「誰でも・いくらでも」借りられるわけではなく、ある程度収入と与信水準がなければそもそも利用することはできず、仮に融資承認が下りたとしても融資金利が高めに設定される可能性があります。

なお、返済負担率は各金融機関によって基準が異なるため、1社で融資承認が出たからと言って他の金融機関でも必ず承認が取れるわけではありません。
そのため、フルローン利用時に限らず、住宅ローンの事前審査は何社かに同時に申込み、一番条件が良いところを選択するという方法がおすすめです。

住宅ローンの審査に通るか不安な方は、住宅ローンアドバイザーがいる不動産会社に相談するのがスムーズです。不動産会社は住宅購入の成功に大きく関わってきますので、慎重に選ぶようにしましょう。良い不動産会社を選ぶポイントをこちらの記事で解説しています。

フルローン利用時のリスクと注意点

フルローンはリスクが高いため、一般的にあまり良くないと言われています。
そこで、まずはフルローンのメリットとデメリット(リスク)をそれぞれ整理してみましょう。

  • メリット①:手元に現金を残すことができる
  • メリット②低金利のメリットを最大限享受することができる
  • デメリット①:返済額が高くなる
  • デメリット②:返済不能に陥るリスクがある

メリット①:手元に現金を残すことができる

生活の中で、ケガや入院などで急に現金が必要となることは珍しくありません。頭金を充当したことで手元の現金が枯渇するよりも、フルローンにより手元の現金を残しておく方が、生活上の安心感を確保することができるのです。

メリット②手元に現金が少なくても即時に購入することができる

フルローンを利用することで、自己資金が少ないために泣く泣く購入を諦めることなく、わずかな現金で購入することができます。

デメリット①:返済額が高くなる

当然ですが、借入額が増えるため毎月の返済額および総返済額が増加してしまいます。

デメリット②:返済不能に陥るリスクがある

無理にフルローンを組み、実際の返済能力を超えてしまった場合は返済不能に陥る可能性が高いです。特に新築物件の場合は「新築プレミアム」が上乗せされて販売価格が設定されているため、特殊なエリアや条件の物件を除いて入居後すぐに10%程度価格が下落すると言われています。

つまり、入居後すぐに何等かの事情で売却する必要がある場合、その時点で購入金額の90%程度の価格となるため、残債割れが生じる可能性があるのです。
住宅ローンを組んだ場合は、原則的に購入物件に金融機関を債権者とする抵当権が設定されます。そして売却による所有権移転を行うためには、この抵当権を抹消しならず、ローンを即時完済しなければなりません。

フルローンが向いている人

「フルローンは良くない」という意見は、必ずしも全員に当てはまるわけではありません。下記の様な状況の方はむしろフルローンが有益であると言えます。

  • 返済計画に余裕がある
  • 手元の現金に余裕がある

住宅購入では「無理な住宅ローンを組まない」ことが鉄則です。
不動産は価格が高ければその分立地条件や建物のスペックが良くなるため、物件を見れば見るほどに良い条件で高い物件を購入したい気持ちになりますが、金融機関が設定する借入限度額と実際に無理なく返済できる金額に乖離があることには注意しなければなりません。

そのため、購入する物件が年収を鑑みて無理のない価格であり、さらにそもそも手元の現金に余裕がある方は、家計を圧迫することなく現在の低金利のメリットを享受することができると言えます。
さらに、4,000万円を上限とする住宅ローン減税の範囲内でローンを組めば、所得税控除についても最大限の優遇を受けることが可能になるのです。

住宅ローンは、年収と返済可能額の目安を確認してから組むようにしましょう。こちらの記事では年収ごとに無理のない範囲で返済できる目安額を紹介しています。ぜひご覧ください。

おわりに:条件によってはフルローンを組むことはむしろメリットになる

現在、住宅購入の頭金を入れない「フルローン」を利用する方が増えています。
フルローンを組むことによって、手元の現金がわずかであっても気に入った物件があれば即時に購入することができる一方で、返済能力を超えて借入を起こしてしまえば返済不能に陥るリスクもあるため利用には十分な注意が必要です。

フルローンの利用はリスクが大きいとして一般的にはあまりおすすめされていません。しかし、手元の現金に余裕がある方、そして年収に対する返済額に十分な余裕がある方にとっては、現在の超低金利において最大限の借入を起こすことは、かえって金銭的なメリットが大きいと言えます。

いずれにしても、住宅購入は「無理な借入を起こさない」ことが鉄則です。将来のライフステージや売却の可能性も考慮しながら、慎重に借入額を設定することが重要です。

この記事を書いた人

スターフォレスト代表取締役増田浩次(ますだこうじ)

埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。

この記事を監修した人

株式会社ユナイテッドリバーズ代表取締役沢辺敦志(さわべあつし)

千葉県出身。自身の自宅購入時に、不動産仲介会社に不満を持ったことをきっかけに不動産売買仲介業を開業し、不動産仲介手数料無料機構イエフリをオープンさせる。
自身の苦い経験から、受付・接客業務に特にこだわってチームづくりを心がけてサービス運営している。
趣味は料理、二児の父。

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