不動産業界の裏側|「囲い込み」の実態と具体的な対策

不動産を売却するときに、知っておきたい問題の一つに「囲い込み」があります。これは、不動産仲介会社が売主の物件情報を独占し、他社の仲介を通じた売買を制限する行為のことです。
囲い込みが行われると、売主は物件をできるだけ早く、そして適正な価格で売るチャンスを逃してしまうかもしれません。また、買主にとっても、本来なら手に入れられたはずの物件を逃してしまう可能性があります。
この記事では、囲い込みがなぜ起こるのか、その背景や実際の手口、そして売主としてどう対策をすればいいのかをわかりやすく解説していきます。
この記事を読むとわかること
- 囲い込みとは? その仕組みと実態
- なぜ囲い込みが起こるのか? 不動産業界の裏側
- 囲い込みの見分け方と具体的な手口
- 売主が囲い込みを防ぐためにできること
- 信頼できる不動産会社を見極めるポイント
宅地建物取引士である代表の沢辺がYouTubeで解説しております。実体験を用いてわかりやすく説明していますので、こちらもご視聴ください。
囲い込みが起こる背景
囲い込みは、不動産会社が意図的に情報を操作することで発生しますが、その背景には業界特有の仕組みやビジネスモデルが関係しています。ここでは、囲い込みがなぜ発生するのか、その理由を詳しく見ていきます。
不動産仲介手数料の仕組み
<売却の流れ>
不動産会社は、売買契約が成立した際に仲介手数料を受け取ります。売主側の仲介会社は、売主から「売却価格の3% + 6万円 + 税」を上限とする手数料を受け取ります。そして、買主側の仲介会社も、同じく買主から手数料を受け取ります。
<片手取引>
<両手取引>
しかし、売主と買主の両方を自社で仲介できれば、売主・買主の両方から手数料を得ることができ、不動産会社にとっては「片手取引」よりも「両手取引」のほうが収益性が高くなるのです。そのため、他社の仲介を通じた取引を避け、自社で買主を見つけようとするケースが少なくありません。
不動産会社が費やす労力
売主の物件を売却するために、不動産会社はさまざまな作業を行います。
- 物件の準備(修理やハウスクリーニングなど)
- 写真・動画撮影、図面作成
- サイト掲載、レインズへの登録
- 問い合わせ対応、内見調整、契約手続き
これらの作業には時間とコストがかかるため、不動産会社としては「せっかく手をかけて準備した物件を他社の仲介で成約させたくない」という心理が働きます。その結果、「自社で買主を見つけるまで他社の仲介を受け付けない」といった囲い込みが発生しやすくなるのです。
囲い込みの実態と具体例
不動産会社が売主や買主に対して「囲い込んでいます」と明言することはありません。そのため、外部からは実態が見えにくく、売主や買主が気づかぬうちに不利益を被ることがあります。
ここでは、囲い込みの具体的な手口と、その実際の事例について紹介します。
内見拒否の手口
囲い込みが行われると、他社の仲介を通じて購入を希望する買主が内見を申し込んでも、何らかの理由をつけて断られるケースが出てきます。代表的な手口として、以下のようなものがあります。
露骨に内見を断る
他社の仲介業者が問い合わせると、「すでに申し込みが入っています」「売主の都合で内見不可です」といった理由で内見を拒否される。
「予定が合わない」と言われる
『今週は内見の予約が埋まっている』『売主のスケジュールが合わない』と、売主に確認せずに内見を断っている。
威圧的な態度で対応する
内見を申し込んだ際に、ぶっきらぼうに返事をするなど、相手が引いてしまうような対応を取る。
実際にあった威圧的な対応
実際にあったケースとして、ある不動産会社が物件確認のために電話をした際、次のようなやり取りが行われました。
1. 仲介業者が「○○の物件、内見できますか?」と問い合わせる。
2. 相手の不動産会社が 長い沈黙 の後、低い声で「……ありますよ」とだけ返答。
3. 「では、何日に内見可能ですか?」と聞くと、再び 曖昧な対応 をされる。
このようなケースでは、一般客が直接問い合わせた場合には問題なく内見できることもあり、明らかに他社の仲介を避けようとしていると考えられます。
囲い込みの確信が持てない背景
囲い込みが疑われるケースでも、100%確実に「囲い込みが行われた」と断定するのは難しいことがあります。その理由として、以下のような点が挙げられます。
証拠が残りにくい
電話などの口頭での対応が多く、明確な証拠を取得しにくいため、「単なるスケジュールの都合だった」と言われると反論が難しい。
囲い込みが会社単位ではなく、担当者単位で行われることもある
会社として囲い込みを行っているのではなく、個々の営業担当が独断で行っている場合もある。
売主が状況を把握しにくい
売主は他の不動産会社からの問い合わせの有無を直接確認できないため、「本当に問い合わせがなかったのか?」を知ることができない。
囲い込みの具体的な2つの対策
囲い込みは売主にとって大きな不利益をもたらす可能性がありますが、適切な対策を取ることでリスクを抑えることができます。ここでは、囲い込みを防ぐために売主ができる具体的な方法を紹介します。
対策1. 一般的な方法
「囲い込みを知っている」と伝える
不動産会社と契約する際に、「囲い込みの問題について認識している」と伝えるだけでも抑止力になります。
「囲い込みが心配なので、問い合わせの状況をしっかり報告してほしい」と最初に伝えておくことで、不動産会社側も不正な対応をしづらくなります。
問い合わせ状況の詳細報告を依頼
どの会社から、いつ、どんな問い合わせがあったのかを定期的に報告してもらうように依頼します。
報告が曖昧な場合や、「問い合わせがほとんどない」と言われた場合は、別の方法で確認することも検討しましょう。
定期的な進捗報告を求める
1〜2週間ごとに問い合わせ状況や内見の件数を報告してもらうことで、囲い込みが行われていないかチェックできます。
特に東京では、一定の期間内に問い合わせが全くないというのは不自然なケースが多いため、注意が必要です。
レインズ以外の売却手法を検討する
都市部では多くの問い合わせが見込めるため、レインズ(不動産業者向けの物件情報システム)に登録しておけば、基本的に他社の仲介からも反応があるはずです。
しかし、地方ではレインズだけでなく、現地の看板広告や別の販売手法を組み合わせた方が有効な場合もあります。
不動産会社風の電話確認を試す
囲い込みが疑われる場合、「物件確認をお願いしたいのですが」と不動産会社風の対応で電話をしてみるのも一つの方法です。
例えば、売主自身は内見対応の予定が空いているにもかかわらず、「売主の予定が合わない」という理由で内見を断られた場合、囲い込みの可能性が高いと考えられます。
第三者に確認を依頼する
自分で確認するのが難しい場合は、別の不動産会社に協力してもらい、物件の問い合わせを試みてもらうのも有効です。
客観的な視点から状況を把握することで、囲い込みの有無をより正確に判断できます。
対策2. 物理的に囲い込みを防ぐ方法
囲い込みを防ぐためには、不動産会社の報告を信用するだけでなく、売主自身が問い合わせの状況を直接確認できる環境であることが重要です。
弊社イエフリでは、囲い込みを防ぐために、物理的な対策を講じた仕組みを導入しました。問い合わせを一元管理し、売主がリアルタイムで状況を把握できるようにしています。さらに、データの改ざんを防ぐことで、売主が安心して売却活動を進められる環境を整えています。
物件の広告ページに専用の「問い合わせボタン」を設置
→ 買主や他の仲介業者が物件の詳細確認や内見を希望する際は、すべてこのボタンから問い合わせ
内見の申し込みや詳細確認の問い合わせは、すべて指定のフォーム経由で受付
→ 口頭でのやり取りではなく、すべて記録が残るフォームを使用
問い合わせ内容は自動的にGoogleスプレッドシートに記録され、売主がリアルタイムで確認可能
→ どの会社から、いつ、どのような問い合わせがあったのか、売主自身が即座に把握できる
Googleスプレッドシートの変更履歴機能により、データの改ざんを防止
→ 問い合わせ情報を後から削除・修正しても履歴が残るため、不動産会社が意図的に問い合わせを隠すことができない
この仕組みにより、売主は「本当に問い合わせがなかったのか?」を自身で確認できるようになり、不動産会社の報告に頼る必要がなくなります。
また、不動産会社側も囲い込みを行う余地がなくなるため、売却活動がより透明に進められます。
まとめ
囲い込みは、不動産会社が自社の利益を優先し、売主に不利な状況を生み出す問題です。売却機会の損失を防ぐためには、問い合わせの状況を把握し、囲い込みができない仕組みを導入することが重要です。
弊社では、すべての問い合わせを透明化し、売主が状況を直接確認できる仕組みを採用し、安心して売却活動を進められる環境を提供しています。
囲い込みのない、透明な不動産売却を希望される方は、ぜひ下記よりご相談ください。
この記事を書いた人

株式会社ユナイテッドリバーズ代表取締役沢辺敦志(さわべあつし)
千葉県出身。自身の自宅購入時に、不動産仲介会社に不満を持ったことをきっかけに不動産売買仲介業を開業し、不動産仲介手数料無料機構イエフリをオープンさせる。
自身の苦い経験から、受付・接客業務に特にこだわってチームづくりを心がけてサービス運営している。
趣味は料理、二児の父。
【保有資格】宅地建物取引士、FP他