不動産売却の媒介契約と特別な広告活動をしてもらうには?

住宅ローン負担の軽減や老後のライフスタイル実現を目的として、マイホームの売却を検討する方も多くいらっしゃいますが、マイホームの売却は、幅広く買主を探せる不動産会社の協力があってこそ成り立つものです。そして、不動産会社に売却を依頼する際に注意すべき点は、不動産会社と結ぶ媒介契約の内容と広告費との関係についてです。
- 不動産会社と締結する媒介(ばいかい)契約の種類に大きな違いがある
- 広告費は、原則として不動産会社が負担する
- 広告費の負担を前提に、通常の仲介業務に含まれない広告活動を行ってもらうことは可能
- 広告の表示内容については、厳しく制限されている
この記事では、不動産売却における媒介契約の種類と、広告費負担について詳しく説明していきます。
Youtubeでは弊社代表の沢辺が、高く物件を売るために不動産会社とのやりとりの仕方ついて解説しております。
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不動産売却の流れと媒介契約
「子供たちも皆自立したし、3LDKは老後の暮らしには広すぎるよね。」
「そうね…掃除も大変だし、光熱費も部屋が広い分高い気がするわ。」
「老後は海沿いでのんびり暮らしたかったし、住み替えも考えてみようかな。」
「じゃあまずは不動産会社に相談ね。早く売却するためにはいろんな不動産会社にお願いしておけばいいのかしら?」
不動産の売却については個人間で行うことも可能ですが、契約書の作成などの事務や第三者的な立ち位置として、不動産仲介業者に依頼することが一般的といえるでしょう。まずは不動産売却についての大まかな流れを把握した上で、媒介契約の種類について理解してきましょう。
不動産売却の大まかな流れとは
まずは不動産売却の大まかな流れは以下のとおりです。
- 不動産会社へ売却の相談
- 不動産会社による物件の査定
- 不動産会社との媒介契約の締結
- 売却準備と売却活動の確認
- 売買契約の締結
- 残金決済と物件の引き渡し
不動産会社への相談と物件の査定については、複数社に依頼して比較検討したほうが安全ですが、査定が高いという理由だけで不動産会社を決めるのは危険です。査定の金額の根拠を明確に提示してくれる不動産会社が望ましいといえます。
また、物件査定の流れで媒介契約を結んでしまうのも危険です。媒介契約とは、不動産会社が物件の売却活動を行うための契約ですが、契約の種類によって活動の内容が大きくことなります。特に、専属専任媒介契約については、売主が行うことができる活動が制限され、複数社に売却を依頼することも違反となります。
④から⑤の流れについては、不動産会社のサポートを受けながら、順次行っていくことになります。
媒介契約は結びつきの強さで3種類に分類される
先に述べた媒介契約の種類ですが、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類に分類されます。媒介契約自体に料金はかからず、契約の成立をもって報酬(仲介手数料)が発生しますが、媒介契約に関して理解しておくべきポイントは以下の5つの内容です。
- 複数の不動産会社と媒介契約を結ぶことができるか
- 自分自身で買主を見つけた場合にどうなるか
- 契約期間の制限
- 不動産流通機構(レインズ)への登録義務
- 売却活動報告の頻度
なお、不動産流通機構(レインズ)とは、不動産業者専用のデータベースです。あらゆる不動産業者が閲覧するデータベースであるため、掲載をすることで広く買主を募集することになります。
専属専任媒介契約
- できない
- その場合でも不動産会社を仲介させることが必要
- 最長3ヶ月まで
- あり
- 7日に1回以上
専属専任媒介契約は、媒介契約のなかでもっとも制限が強い契約になりますが、その反面で不動産会社には責任のある売却活動と報告を行う義務が生じます。
専任媒介契約
- できない
- 不動産を仲介せずに契約が可能
- 最長3ヶ月まで
- あり
- 14日に1回以上
専属専任媒介契約との主な比較は、自分自身で買主を見つけた場合に仲介が不要かという部分と、売却活動報告の頻度についてです。自分自身で買主を見つけた場合に仲介が不要という意味合いは、仲介手数料が不要となるメリットがあります。
不動産購入時にかかる仲介手数料のからくりについては、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
専属専任媒介契約は、他社との媒介契約も制限されている上に、自分自身で買主を見つけた場合でも不動産会社を仲介させなければなりませんが、報酬が確約されているという意味では、不動産会社はより一層売却活動に力を入れることが想定されるのです。
一般媒介契約
- できる
- 不動産会社を仲介せずに契約が可能
- 規定はないが、3ヶ月が一般的
- なし
- なし
媒介契約の中でも一番緩い内容であるのが一般媒介契約です。幅広い不動産会社に仲介を依頼できるため、依頼する不動産会社に対しての中立性が増す一方で、レインズへの報告や販売活動の報告については義務がなく、積極的な販売活動に結びつかない可能性があります。
不動産会社に広告を出してもらうには?
不動産の売却活動をする上で、広告の効果は高いといえますが、その費用負担はどのように決められているのでしょうか?また、売主から広告の掲載を依頼することはできるのでしょうか?
広告費は仲介手数料に含まれている
原則として、広告費は仲介手数料に含まれていると定義付けがされています。つまりは、広告の内容については不動産会社に任せることになります。ここで大きなポイントは、一般媒介契約を結んだ不動産会社が広告費用をかけていても、成約しなかった場合には赤字出費となる点です。
制限が厳しい種類の媒介契約であればあるほど、報酬としての仲介手数料が担保される状態ですから、不動産会社にとっては広告費がかけやすく、売却を目指して活発的な活動を行ってくれることに期待がもてるというわけです。
特別な依頼で広告活動をしてもらえるケースとは?
売主の希望を元に、特別な依頼をして広告費の実費負担を前提とした広告活動を行ってもらうことは可能ですが、特別な依頼が認められるのは「通常の仲介業務に含まれないこと」という前提が条件です。
「通常の仲介業務」に含まれる広告の内容としては、レインズへの登録、来客への紹介、チラシのポスティングや新聞への折り込み、現地看板による広告、インターネット物件サイトへの掲載が挙げられるため、特別な依頼が認められることはほとんどありません。
過去の判例では、売主の希望で、遠隔地での交渉をする必要が出たため、不動産会社の担当者が出張で現地に赴いた場合の出張費などが該当するとされています。もっと広告を増やしてほしいなどの依頼については、不動産会社が可能な限り、仲介手数料の範囲の中で行うことになっています。
広告の内容は厳しく制限されているため、売主の意志は必ずしも反映されない
不動産広告については、「おとり広告」や「不当表示」が公正取引委員会や不動産公正取引協議会から厳しく制限されており、これらに違反した業者については罰則規定が設けられています。近年、罰則規定の内容に、大手の不動産ポータルサイトへの掲載禁止などが盛り込まれるようになりましたが、この罰則は版売活動に直結する実効性のある内容です。
不当表示については、広告に掲載される言葉の表現に対しても厳しく制限される内容ですから、希望を伝えることには問題ありませんが、不動産会社の判断に任せることが賢明といえるでしょう。
おわりに:媒介契約と広告費の関係を理解し、不動産会社との良好な関係を維持しよう
マイホームなどの不動産売却については、3種類の媒介契約のうち、どれを選ぶかが重要です。一社の不動産に全てを一任するという内容か、さまざまな不動産会社に依頼をして中立性を持たせるかなどの判断には、物件が売れにくいか売れやすいかについての査定も必須です。不動産売却の手順を踏まえた上で、相談、査定、媒介契約締結という段階を飛ばさないように注意しましょう。
また、広告費は仲介手数料の中から支払われることを理解し、不動産会社との良好な関係を維持しながら、売却活動に注力してもらうように心がけましょう。
この記事を監修した人

宅地建物取引士小林弘卓
長野県軽井沢生まれ、群馬県高崎市育ち。教員免許を取得したのち、教育関係の仕事に従事も、現場にて母子家庭や貧困家庭を目の当たりにし、何か役に立つことはできないかと決起。ファイナンシャルプランナー2級およびAFP、宅地建物主任者の資格を取得後、家計のやりくりから投資運用などお金のアドバイスだけではなく、様々なお悩み事を第3者の視点でアドバイスすることを目的とした「トータルアドバイズ」代表として活動。九星気学鑑定士としての人生相談も好評を得ている。