再開発で注目される「京成立石」。立石在住のジャーナリストが語る今とこれから。住みやすさ、アクセス、災害などについて解説

葛飾区・京成立石に家を建て、家族で住み始めて7年になる。立石に実家がある主人と付き合い始めた2008年から15年近くこの街を見てきたが、ここ数年が、最もこの街の変化が大きかった。
そして向こう数年で、立石はこれまで以上に大きく変わることになる。
目次
京成立石の魅力は利便性の高さと人のあたたかさ
立石は、葛飾区のほぼ中央に位置する街だ。葛飾区役所や葛飾区文化会館(シンフォニーヒルズ)があり自治の中枢を担う場所でありながら、下町情緒も色濃く残る。近年では「センベロ(千円でベロベロになるまで酔える)」の街としても、区内外の人から愛されている。
生まれたときから立石に住んでいる義父によれば、立石にはかつて映画館やキャバレーもあったという。今でも残る「呑べえ横丁」は、昭和のディープな日本を感じられる貴重なエリアだ。
とはいえ、情緒のある飲食店が見られるのは駅周辺だけ。立石で生活している私は、この街のアクセスの良さや生活利便性の高さ、人のあたたかさが非常に気に入っている。
日本橋・新橋・品川まで一本という利便性の高さは大きな魅力
京成立石駅は、駅こそ古いものの、京成押上線から都営浅草線に乗り入れているため、押上や浅草、浅草橋、日本橋、新橋、品川などまで乗り換えなしで行くことができ、非常に便利だ。
逆方面に行って1回乗り換えれば、山手線にも簡単に出られる。羽田空港、成田空港へのアクセスも容易なため、コロナ禍前には民泊施設も駅周辺に複数見られた。
行き先 | 所要時間 | 乗り換え |
日暮里 | 20分 | 1回 |
押上 | 6分 | なし |
浅草 | 10分 | なし |
浅草橋 | 14分 | なし |
日本橋 | 19分 | なし |
新橋 | 25分 | なし |
品川 | 37分 | なし |
羽田空港 | 57分 | なし |
成田空港 | 1時間14分 | 1回 |
(ジョルダンで検索)
交通利便性における難点を挙げるとすれば、駅前にバスロータリーやタクシー乗り場がないこと。京成立石駅は、北口も南口も降りてすぐに商店街があるため、バスやタクシーが通行したり、待ったりすることはできない。
だが、この点については、後述する駅前再開発で解消される見込みだ。
生活利便施設・教育施設が充実している
南口にも北口にも大型スーパーがあるため、日常の生活で困ることはない。駅前の商店街には、飲み屋だけでなく、肉屋や八百屋、魚屋、惣菜店が揃っており、店主と会話をしながら買い物することもできる。価格も安い。これも、下町ならではの楽しみといえるだろう。
同じ東京でも別の区で育った私が驚いたのは、小学校の数。駅から徒歩で行ける小学校だけでも、5〜6校はある。ただやはり昔と比べると子どもの数は減っているため、学級数は少ない。学年によっては1学級の学校も見られる。保育園や幼稚園の数も多く、2022年度の待機児童数はゼロだ。
公園の数も多く、治安も悪くないため、子育てもしやすい環境だといえるだろう。
さすが下町。お祭りやお餅つきなどのイベントは多い
コロナ禍でだいぶ減ってしまったが、桜の季節には各地でさくら祭りが催され、夏の夜には毎週のように花火や太鼓の音が街中に響き、年が明けると町内会の方々がお餅をついて振る舞ってくれる。立石ではこの手のイベントが多いことに加え、参加者も非常に多い。
そして、年齢層も幅広い。このようなイベントを通し、季節の移り変わりや人と人との繋がりが感じられるのもまた、下町ならではの良さだろう。
京成立石駅の駅前再開発
(出典:葛飾区)
立石駅周辺では現在、再開発が進んでいる。開発エリアは、立石駅北口地区、南口西地区、南口東地区の約4.5ha。数年前から、高架化に向け切り替えの線路を増設するための立ち退きや工事が進み、2023年現在は北口開発エリアの立ち退きが進んでおり「いよいよ」という雰囲気だ。
北口再開発
(出典:立石駅北口地区第一種市街地再開発事業)
立石駅北口といえば、商店街「立石すずらん通り」を中心に先述した「呑べえ横丁」をはじめ、路地裏にまで昔ながらの老舗がひしめくエリアだ。上記、航空写真を見ても、駅前ロータリーなどはなく、家屋がひしめき合っている様子がおわかりいただけるだろう。
しかし、この光景もじきになくなる。再開発後、すずらん通りは交通広場へと生まれ変わり、この広場を囲むように地上36階建て、約650戸のタワーマンションや葛飾区新庁舎も入る大型商業施設が建つ。竣工は、2028年度を予定している。
(出典:立石駅北口地区第一種市街地再開発事業)
南口西地区再開発
南口西地区の再開発エリアは2023年7月に都市計画が決定したばかりで、北口のように立ち退き等はまだ進んでいない。
このエリアは、2つの商店街で構成される。1つは、コンビニや銀行のATM、100円ショップなどが立ち並ぶ「立石駅通り商店街」。そして、もう1つが「立石仲見世商店街」だ。
仲見世商店街商店街は「センベロ」の代名詞ともいえる居酒屋をはじめ、肉屋や八百屋、惣菜屋など、立石の原風景ともいえる昭和レトロな店が立ち並ぶ。
だが、この光景もなくなり、地上34階、高さ125m、全700戸のタワーマンションと駐輪場や事務所利用を目的とした3階建てのビルに生まれ変わる予定だ。
(出典:葛飾区)
南口東地区
(出典:葛飾区)
南口東地区にもまた、地上34階建て、約450戸のタワーマンションが建つ予定だ。加えて、このエリアには交通広場も整備される。高架になり、北口だけでなく南口も車で駅前まで乗り入れることができるようになれば、交通利便性は飛躍的に高まるだろう。
京成立石に住むにあたり知っておきたいこと
(出典:東京都)
上記のように、葛飾区は23区の中では最も地価が低いエリアの1つだ。住宅地における2023年地価公示の前年比変動率は「+2.8%」だった。区部全域は「+3.4%」だったことを踏まえれば決して高い上昇率ではないが、東京都全域の上昇率「+2.6%」は上回っている。
一方、再開発エリアにほど近い立石4丁目地点の前年比変動率は「3.60%」、再開発エリアに含まれる立石1丁目地点は「+2.94%」と、3%前後の上昇率が見られる地点もある。
- 利便性が高い割に低い地価
- かつてない大規模な再開発が進行中
- 開発後に急増する世帯数
以上のことを踏まえれば、将来性もあり暮らしやすい、立石は非常に魅力的な街だと思う。ただし、水害リスクの高さだけには気をつけたい。
災害リスクを必ず確認し、備える
(出典:葛飾区)
立石は、荒川、中川という大きな2つの河川に囲まれているエリアであり、隅田川、江戸川にも近く、ハザードマップでは200年に1度、100年に1度の規模の大雨があった場合、立石全域が浸水被害を受けると想定されている。立石に住んで7年。令和元年台風のときだけは、荒川が決壊しないかヒヤヒヤしたものだ。
近年、全国的に水害被害が多発・激甚化していることに鑑みれば「100年に1度」がいつ起こるともわからない状況であると考え、十分に備えておくべきだろう。
まとめ
京成立石の代名詞ともいえる駅前の昭和レトロな街並みはなくなるが、現在進められている再開発により、利便性は飛躍的に高まるだろう。再開発で予定されている3棟のタワーマンションの合計戸数は、約1,800。元来、暮らしやすさのポテンシャルは有していることから、これだけの世帯が増えれば、開発エリア以外の地区も街の賑わいも、そして住宅の価値も大きく変わっていくものと推測される。
この記事を書いた人

株式会社real wave 代表取締役 亀梨 奈美(かめなし なみ)
不動産ジャーナリスト。大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年に株式会社real wave設立。不動産全国紙の記者として、不動産会社や専門家への取材多数。
「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに執筆している。