間違ってはいけない!住宅ローンにおける年収と返済可能額の目安とは?

マイホーム選びで重要となるのが、自分自身の年収と照らし合わせて、いくらぐらいの物件を購入できるか試算することですが、借りることができる金額と無理なく返済できる金額は大きく異なります。
年収から考える住宅ローンの金額設定のポイントは以下のとおりです。
- 総返済負担率は年収に対する全てのローンが占める割合である
- 年収は手取り額ではない
- 借入可能額は総返済負担率の30~35%程度
- 無理なく返済できる金額は総返済負担率が20%程度
- フルローンの場合、諸費用にも配慮する
この記事では、勘違いしやすい住宅ローン借入のポイントについて、詳しく説明いたします。
弊社代表沢辺のYoutubeでは、日本人の平均的な年収である600万円世帯を基準に、適切な購入価格についてもご紹介しています。
目次
年収から考える住宅ローンの金額設定とポイント
「僕の年収は400万円だから、毎月の収入は12で割って、33万円か…じゃあ毎月の返済額は13万円ぐらい余裕かな…」
「え?ちょっと待って!その計算、何か違う気がする…年収と手取りって違うんじゃない?」
「あ!そうか!ってことは、いくらまで住宅ローンを組めるんだろう?」
「住宅ローンが組める金額じゃなくて、無理なく返済できる金額を考えないといけないんじゃない?」
まず、金融機関が算出する借入可能額と返済可能額は異なりますが、無理なく返済ができる毎月の支払金額から逆算することで、自らが購入可能な物件の価格が算出されるのです。
住宅ローンの審査で重要な「総返済負担率」と「年収」の定義を理解しよう!
住宅ローンの審査で重要となるのは「総返済負担率」です。「総返済負担率」とは、年収に占める各種ローンの返済額の割合です。注意すべきは、住宅ローンの返済額だけではないということ。車のローンやキャッシングローン、ショッピングローンなど、全てのローンを含めた返済額を指します。
たとえば、フラット35(35年間、固定金利の住宅ローン商品)においては、利用条件を「年収400万円未満であれば総返済負担率は30%以下」、「年収400万円以上であれば総返済負担率は35%以下」と明示しており、これを超える借入はできないことになっています。
また、どれくらい借りることができるのかを考える際の「年収」の定義についてもしっかり把握しておきましょう。「年収」とは額面上の金額であり、「手取り」とは異なります。「年収」から各種保険料や税金を差し引きした金額が「手取り」であることを意識することが重要です。
借入可能額と無理なく返済できる金額とは大きな違いあり!
それでは、先ほどのフラット35の条件を元に、実際にいくら借りることができるのかを考えてみましょう。「年収400万円未満であれば総返済負担率は30%以下」という条件から、年収400万円とし、最大値の30%で考えれば、総返済負担額は120万円ということになります。つまり、各種ローンの合計が毎月10万円の返済額であれば返済できる金額とみなされて借入可能となるわけです。
では、年収400万円の手取り金額はいくらでしょうか?一般的には、額面の約8割ほどが手取り金額とされていますので、年間の手取り金額は320万円となり、毎月の手取り金額は約266,000円となります。つまり、266,000円のうち、最大10万円を返済できる金額とみなされて住宅ローンが借入可能と考えたらいかがでしょうか。
残りの166,000円の中から、家族の食費や光熱費、携帯電話料金などの生活費を支払うだけではなく、子供の教育費、マンションの場合には管理費や修繕費を工面し、各自の小遣い、将来に向けた貯蓄も行うと考えれば、やりくりが厳しく感じるかもしれません。
無理なく返済ができる総返済負担率の理想は20%程度
実は、無理なく返済ができる総返済負担率の理想は20%程度と言われています。つまり、年収400万円であれば、総返済負担額は80万円、毎月の返済負担額は約66,000円程度です。年収400万円の場合の毎月の手取り金額は約266,000円ですから、残金200,000円でやりくりをするとなれば、確かに余裕が出てくるのではないでしょうか。
では、総返済負担率の理想である20%から、借入可能金額を逆算してみましょう。住宅ローンの商品をフラット35(35年返済の固定金利、元利均等方式での返済、ボーナス時返済増額無し)とした場合、2020年12月現在の最頻金利(最も多く適用されている利率)である1.310%とした場合、借入可能金額は約2,222万円です。
借入可能金額に対しては住宅ローンの諸費用も配慮する
年収400万円から算出された、無理のない返済ができる借入可能金額が分かったところで、約2,222万円の物件を探してよいかといえば、そうではありません。マイホームの購入には仲介手数料や住宅ローン手数料、登記費用、火災保険料などの諸費用がかかります。
フルローンの場合、これらの諸費用も住宅ローンの借入額で工面することになりますが、諸費用の概算は3%~最大10%とされていますので、仮に諸費用を10%とした場合、物件費用の対象となるのは約2,000万円であることが分かります。
なお、諸費用の大半を占めるのが、不動産会社に支払う仲介手数料です。仮に2,000万円の物件を購入した場合の仲介手数料は約66万円ですから、仲介手数料が無料である不動産会社で物件を購入する場合、この金額を加えた価格の物件を購入することができると考えてよいでしょう。
また、もし自己資金を用意している場合も、借入金額に上乗せした価格の物件を購入できると考えて差し支えありません。
固定金利?変動金利?住宅ローンの種類について
住宅ローンには様々な種類がありますが、金利方式と返済方法によって、分けることができます。
固定金利型と変動金利型
金利の種類については、固定金利型と変動金利型がありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
固定金利のメリットは、なんといっても将来の返済額が確定されるために返済計画が立てやすいことです。一方、デメリットとしては、金利水準は変動金利よりも高く設定されていることです。2020年12月現在においては、変動金利よりも固定金利のほうが1%ほど高く設定されています。たかが1%と感じられるかもしれませんが、長期間のローンの場合、数百万円の違いにつながるのです。
続いて、変動金利のメリットとデメリットですが、固定金利のメリットとデメリットの真逆といえます。メリットは金利水準が低いこと、デメリットは将来の返済計画が立てづらいことです。
ここで、変動金利について正しく理解しておきましょう。変動金利は、金利が半年に一度見直されますが、返済額については半年ごとではなく、5年に一度のみ見直されるというルールがあります。つまりは、5年間については毎月の返済額が一定です。
見直される金利は市場金利の上下に応じて決められますが、万が一急激な金利上昇があったとしても、返済額は最大1.25倍までというルールも設けられています。ただし、仮に住宅ローンを毎月100,000円返済していたところ、毎月125,000の返済を強いられることになるという意味では、固定金利よりはリリスクが高いといえるのです。
固定金利型のポイント
- メリット…将来の返済額が確定されるために返済計画が立てやすいこと。
変動金利のポイント
- メリット…金利水準が低いこと。
- デメリット…将来の返済計画が立てづらいこと。
元利均等返済と元金均等返済
返済方式については、「元利均等返済」と「元金均等返済」があります。
元利均等返済とは、完済までの返済額が常に一定であり、返済当初は返済額のうち、利息が占める割合が多いですが、次第に元金が占める割合が高くなる方式です。
一方、元金均等返済は、毎月返済する元金が一定である方式であり、そこに利息が加算された金額を返済する方式です。返済額は一定ではなく、第1回目の返済が最も高く、次第に上乗せされる利息額が減少するために、返済額も減少していくという返済方式です。
返済する期間が同じであれば、元金均等返済のほうが総返済額は少なくて済むことになりますが、返済開始当初の返済額が元利均等返済よりも高くなりがちであることから、借入時に必要とされる収入の基準が高くなることはデメリットといえます。
元利均等返済のポイント
- 返済額が常に一定。
元金均等返済のポイント
- 毎月返済する元金が一定で、そこに利息が加算された金額を返済する方式。
- デメリットは、借入時に必要とされる収入の基準が高くなること。
おわりに:返済を円滑に行うために、借入可能額を正しく理解しよう
借入可能額の最大額まで借りてマイホームを購入してしまった場合、返済不能となるケースが多いといえます。返済不能となれば、せっかく手に入れたマイホームを手放すことになり、最悪の場合借金が残ることにもつながります。
家族の生活拠点を長く守るためにも、無理なく返済ができる借入可能額を把握しておくことが何よりも重要といえるでしょう。
この記事を監修した人

宅地建物取引士小林弘卓
長野県軽井沢生まれ、群馬県高崎市育ち。教員免許を取得したのち、教育関係の仕事に従事も、現場にて母子家庭や貧困家庭を目の当たりにし、何か役に立つことはできないかと決起。ファイナンシャルプランナー2級およびAFP、宅地建物主任者の資格を取得後、家計のやりくりから投資運用などお金のアドバイスだけではなく、様々なお悩み事を第3者の視点でアドバイスすることを目的とした「トータルアドバイズ」代表として活動。九星気学鑑定士としての人生相談も好評を得ている。